出版社内容情報
旅に私の人生が飲み込まれることは、きっともうない。それでも私は旅をしたい――。中年に到り、ふたたびアジアへ! 迷走旅エッセイ。
宮田 珠己[ミヤタ タマキ]
著・文・その他
内容説明
「旅に私の人生が飲み込まれることは、きっともうない。それでも、私は旅をしたい―」中年に到り、タマキングは旅に出た。日常から逃れ、殺風景な宿に泊まり、雑然とした街を散策する。長距離バスに揺られ、地味なビーチで寝そべり、短期休暇をぼんやりと過ごす。ふたたびのアジア旅は、興奮と倦怠のあいだを揺れ動く。達観できない自分をかかえて、台湾、マレーシア、インド、熊本をめぐる迷走旅エッセイ。
目次
はじめに(謎の症状;“ペリー”と闘う私の前に、立ち塞がる壁 ほか)
1 台湾(行き先は台湾がよさそうなこと;“参考”台湾人についてのささやかな事前情報 ほか)
2 マレーシア(なんでわざわざミッションを?;ビーチリゾートの玄関口 ほか)
3 ラダック(わが最愛のザックが、神に見放されるまでの顛末;さらば、いい加減な旅 ほか)
4 熊本(阿蘇の思い出;日本の大地は、案外日本的でないこと ほか)
著者等紹介
宮田珠己[ミヤタタマキ]
1964年兵庫県生まれ。大阪大学工学部土木工学科卒業。旅とレジャーのエッセイを中心に執筆活動を続ける。『東南アジア四次元日記』で第3回酒飲み書店員大賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ホークス
45
著者はついに気づいた。何かを成し遂げたり、他人を凌駕しようとする旅はいらない。もっと本格的でない旅、非日常を味わうだけの旅が必要だと。全くその通り。仕事的ガンバリに背を向けた、ユルい旅の本を著者には書いて欲しい。本書はちょっと変わっている。ぽわんとした紀行文に、著者が旅について考えたあれこれと、日常が溶解するような幻想譚が割り込んでくる。こんな実験作が書きたかったらしい。全体としては中々楽しい。面白いのは著者が、自分はユーモア旅行記を書いてきた、と述べている事。ユーモアって、レトロでかわいい表現だ。2019/10/24
saga
34
読み始めて抱く違和感。それは文庫版あとがきで明らかにされる。恐らく精神的なものと思われる不明な痛み「ペリー」と闘うために休暇旅行という仕事に出かける著者。台湾などのアジア、そして熊本の紀行文のクライマックスに表現される異世界は、『スットコランド日記』で著者がユーモア旅行記の裏に潜む著者の苦悩を知っているだけに、思わず精神の心配をしてしまった自分。私も著者と同じで、旅先でのポートレートよりも風景写真を撮りたい派。このあたりもシンパシーを感じるのだ。2018/11/28
おいしゃん
19
いつもの数倍ぶっ飛んだ文章で、本当に宮田さん??もしかして町田康と共著?と思ってしまうようなスタイル。あとがきによると実験作とのこと、やっぱり。2024/10/13
カツ
9
期せずしての再読。前回も思ったが哲学的・文学的な文章が多く、というかクスリやりすぎじゃね的な感じが凄く好きです。あとがきを読むとやはり意識してそうしてたのか。しかし、文庫化にあたりタイトル変更は反則だよな。新作かと思って借りてしまった。2019/03/27
cithara
9
本書で初めて著者の写真を見た。神経質そうで苦み走った顔の男性。公表するからにはシブく見える写真を選んだのだろうか。でもこれまで抱いてきた著者のイメージ(ジェットコースターや巨大大仏に「ヒャッホ~!」する図)が瓦解した。今回著者の文章はすっかり内省的になっている。まさに「自分のなかに沈降して」いる状態。それは著者が患っている謎の症状<ペリー>と関係があるのか? 彼にとって旅がその症状から目をそらす手段であるなら、私にとっては読書がそれにあたるかも。彼自身も本書を異色作と言っている。以前の文章も好きなのだが。2018/11/17