出版社内容情報
東京は再びオリンピックに向け普請中だが、街を歩けば懐かしい風景の片鱗を思い出す。今と昔の東京が交錯するエッセイ集。解説 えのきどいちろう
内容説明
下町に生まれ、和菓子屋の十代目を継ぐべき人間だったが、空襲で焼けだされ、山の手に移り住んだ。それからずっと東京の街を見てきたが、なじみの映画館やレストラン、洋服屋はかなり姿を消し、どんどん変わってゆく。昔の東京はもはや映像や写真の中にしかない。記憶の中にある風景を思い浮かべ、重ね合わせながら歩く。東京の今と昔が交錯するエッセイ集。
目次
東京駅から始まる
粋筋の香りを残す―赤坂
道からの変貌―青山
静かな住宅街から盛り場へ―表参道
雑然とした日本の象徴―渋谷
映画館の町だった―新宿
都内最大の米軍基地だった―六本木
旧山の手人が集う―恵比寿・目黒
東京らしい風景が残っている―日比谷・有楽町
橋だけが残った―日本橋
変わらない町並みと不確かな記憶―銀座
古本と映画の町―神田
生れた町のこと―両国
いまは下町の代表地区―人形町
川の向こうとこっち側の違い―深川
暗いイメージの土地に…―本所
南の果て―品川
東京はまだ“普請中”
私の東京物語
著者等紹介
小林信彦[コバヤシノブヒコ]
1932年生まれ。早稲田大学文学部英文学科卒業。作家(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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- 評価
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
まーくん
66
文学系疎く”小林信彦”の名は知らなかった。小説家か評論家か、はたまたコラムニストか?ググってみるとテレビ局周辺の文化人でもあり、全く知らぬ訳でもなかった。東京生まれの著者が赤坂、青山の山手から銀座、日本橋、・・そして深川、本所の下町まで、その街々のかつてや今を気ままに綴る。学生時代に海苔の山本山分店でバイトしてたためか新宿がやけにディープ。’64東京五輪の前の写真が、東北の田舎生まれの私にも何故か懐かしい。東京はまだ<普請中>。著者は言う「オリンピック(もういいだろうが!)」。私も同感「何をいまさら!」。2019/10/04
ヨーイチ
37
所謂「東京」については小説、評伝、その他で散々書き尽くして来た人だと思う。というか生粋の下町っ子(作者に敬意を表すると日本橋っ子)として東京の地誌に関しては一番の権威の小林信彦の最新(そして最後?)の東京物かも。あまり新しいので戸惑った。スカイツリーとかヒカリエが出てくる。日本橋の老舗和菓子屋の跡取りとして生まれた作者が結局世田谷区民として晩年を過ごしているってことが「年中普請中の東京史」を象徴している。小生にとっても東京は一時的な仮の住処だったなぁ、と感傷的な気分にさせられた。続く2017/07/25
阿部義彦
23
ちくま文庫少し前の新刊。前の東京オリンピックで街が壊されて行ったのに。電通のオリンピック買収工作が明るみに出たのに、オリンピック返上の言を聞かないのはやはり、この国はおかしいと思わざるを得ない。「ニューヨークに行くと、古い本屋がなくなったり細かい変化はあるが、街全体の〈構成〉は変化がない。ニューヨークやパリの街並みがその名をあげただけで頭に浮かぶのは、根本を変えないからである。東京はのべつ変化しているから〈東京〉としてのイメージが定着しない。いつまでたっても〈普請中〉と呼ばれて文句も言えない。」どうなる?2017/10/01
kokada_jnet
19
解説のえのきどいちろう氏が、小学生の頃の思い出として、父の蔵書の『SFマガジン』で、コラムニスト中原弓彦として出会ったと書いている。私は、中原弓彦が『SFマガジン』でコラムを書いていたとは思えないのだが。私が間違っている? 書いていたなら『ミステリマガジン』のほうではないのかな?2017/07/11
浅香山三郎
13
ちくま文庫の小林信彦さんの東京ものとしては4冊目?何れにしても、小林さんの読者にとつてはお馴染みの場所、お馴染みの話といふ感がある。「私は東京を知らない」と言ふものの、やはり体験的な記憶力は相当なもので、両国・日本橋・新宿辺りはさすがに詳しい。また、深川辺りは長らく著者は行つたことがなかつたといふ。其所に惹かれるやうになるのは、古い下町の雰囲気が残つてゐるからだらう。「東京ローカル」(解説のえのきどいちろう氏の表現)といふコトバが似合ふ、東京の風景の年輪がよくわかる本である。2017/09/23