出版社内容情報
婚約を約束するもお互いの夢や希望を追いかける慎一と千春は、周囲の横槍や思惑、親同士の関係からドタバタ劇に巻き込まれていく。解説 山崎まどか
獅子 文六[シシ ブンロク]
内容説明
美男子で合理主義の青年、宇都宮慎一は商売で店を持つことにのめり込み、その婚約者、奥村千春はバレエの道を邁進している。二人には、早くに伴侶を亡くした親がおり、ある時、親同士をくっつけてしまおうと画策するが…。一方でつかず離れずの関係を続ける慎一と千春をうらやむ周囲の人間から、仲を引き裂こうと怪文書が届き、この二人にもドタバタ劇が訪れる!
著者等紹介
獅子文六[シシブンロク]
1893‐1969年。横浜生まれ。小説家・劇作家・演出家。本名・岩田豊雄。慶應義塾大学文科予科中退。フランスで演劇理論を学び日本の演劇振興に尽力、岸田國士、久保田万太郎らと文学座を結成した。一方、庶民生活の日常をとらえウィットとユーモアに富んだ小説は人気を博し、昭和を代表する作家となる。エッセイも多く残した。日本芸術院賞受賞、文化勲章受章(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヨーイチ
53
題名が変。ホラーでは有りませんよ、ご安心あれ。昭和29年の新聞連載小説。文六先生にとって「怪しい」戦後の風潮が活写されている。今風の言葉で云うと、熟年婚、起業と投資、同性愛、女の自立、性同一性への懐疑(障害までは至ってない)等々、もっと有るかも。女っ気の殆ど無いバレリーナ(今だとバレエダンサーかな)と上原謙ばりの美男子にして吝嗇家のカップルってのはかなり大胆な組み合わせ。主人公が大学出のおぼっちゃまのくせに渋谷のパチンコ屋のオーナーって設定は、流石に目眩がした。でもコメディとしてサクサク進んでいく。続く2017/03/28
ユメ
42
獅子文六のラブコメディはとびきりキュートで、その魅力が現代の読者にも訴えかけてくるところが本当に凄いなと思う。登場人物たちの台詞をとっても、言い回しは時代がかっているのだが、込められた息遣いは今も生き生きとしていて、却ってモダンに、垢抜けて感じられる。本書は、一応恋人同士ということになっている美男子の慎一とボーイッシュな千春の二人が、互いに伴侶に先立たれた自分たちの親をくっつけようと画策するところから始まるてんやわんやを描いている。大人より若者の方が冷めているという構図は、今読んでもまったく古びない。2018/01/02
みつ
36
昭和29年の新聞連載小説、とのこと。当時の新聞紙上ではここまで許されるかと驚くばかりの差別用語の多さと当時の風俗描写を別にすれば、内容が古びていないことに驚く。極端な合理主義者の青年とバレエに青春を賭ける女性の、カップルというには淡白な恋愛事情を描き、その親同士の結婚の画策を配置する。人物が生動する様は、いつもの獅子文六調の中でも最上の部類。表題の意味は物語の後半で明らかになり、ここからのジェンダー観が出色。解説で触れられている映画3作の中では、市川崑監督作の配役がぴたりとはまる。一度観てみたい。➡️2023/07/27
ばんだねいっぺい
33
新装丁は、全部よくて、これもよい。クールな主人公もドライなヒロインも右往左往して、タノムヨと思った。ぜひ、映画も見れたらと願う。2017/08/28
みみずく
22
昭和29年に書かれた新聞小説だが現代でも通じるロマンティックコメディ。ロマンス小説好きな人にもお薦めしたい。「美男子で合理主義」の慎一はバレエに一生を捧げる決心をしている千春をサッパリしていて女らしくないところを好ましく思っていて、千春も女性にガツガツしていない慎一を好ましく思っている。この2人の周りからみると一風変わった関係性が物語のキモになっている。慎一が「一体『男らしさ』『女らしさ』とは」という得体の知れないものを色々と調べてまわるところが出色である。市川崑版の映画も見たがそちらも面白かった。2017/04/08