出版社内容情報
しっかり者の妻とぐうたら亭主に起こる夫婦喧嘩をきっかけに、戦後の新しい価値観をコミカルかつ鋭い感性と痛烈な風刺で描いた代表作。解説 戌井昭人
獅子 文六[シシ ブンロク]
内容説明
敗戦後の日本にやってきた“自由”という価値観は、人々の暮らしや風俗、男女の恋愛観までも一転させてしまう。それは、しっかり者の妻とぐうたら亭主の夫婦にもこれまでの仲を揺るがすような大喧嘩をもたらす…。戦後の東京を舞台にある夫婦のドタバタ劇を軽妙な語り口で描きながら、痛烈な社会風刺も込めた獅子文六のあらゆる魅力が凝縮した代表作が遂に復刊!
著者等紹介
獅子文六[シシブンロク]
1893‐1969年。横浜生まれ。小説家・劇作家・演出家。本名・岩田豊雄。慶應義塾大学文科予科中退。フランスで演劇理論を学び日本の演劇振興に尽力、岸田國士、久保田万太郎らと文学座を結成した。一方、庶民生活の日常をとらえウィットとユーモアに富んだ小説は人気を博し、昭和を代表する作家となる。芸術院賞受賞、文化勲章受章(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
いちねんせい
43
「コーヒーと恋愛」を読んで好きになった作家。戦後の様子が生き生きと描かれていて、出てくる人が皆明るい。はたから見るとそれどころじゃなさそうな状況、なんだけど。それじゃ私も先のことはあんまり悩まなくていいかしら、なんて読み終わった後に思ってしまった。読んでいる間中、後ろに昭和の明るい音楽が流れているかのような気分だった。2017/03/17
ヨーイチ
41
いやあ、堪能しました。こんな面白い小説を知らずにいたとは。有名な作で名前は知っていた。すぐさま映画化され(松竹と大映の二社ってのが凄い)更に大ヒットして、その盛況振りがGWの語源になったらしい。小説の寿命ってのも意外と短い物らしい、特に世の中に寄り添った小説は。思い返して見ると小生も「自由学校」って題名とユーモア小説家ってレッテルで不当な先入観を持っていたように思う。「どうせ敗戦直後の軽薄な「自由」を謳歌した作に違いない」と。続く2016/12/07
ヨーイチ
25
再読。ついでに映画も見ちゃった。昔「とんでもハップン、歩いて十分」(近いとか簡単くらいの意味?)てな言い回しが有り、囃し言葉っぽい使い方をしていたと思う。生まれる少し前の大人気新聞連載小説である本作でそのオリジナルを知った。映画では若き日の淡島千景が連発している。この人と佐田啓二(中井貴一のパパ)扮する、軽薄で自由主義?を謳歌するカップルが印象深い。こんな流行り言葉(調べてないけど造語って可能性もある、「てんやわんや」を作った演劇人でもあるわけで)が随所に出てきて非常に楽しい。2024/01/20
いっこう
16
本屋で見つけて良かった!非常に面白い。1951年の発刊で、内容も戦後。その時の新聞にこれが掲載されて、その時の人々はどう感じたのか。自由、夫婦、五十助、細君。ここ最近で一番面白かったー2024/09/06
take0
13
開巻早々、暢気者で怠け者の夫・五百助に堪忍袋の緒が切れた妻・駒子さんは亭主を叩き出す。昭和25年、敗戦により戦前の価値観は暴落し、台頭する自由の風潮の下、駒子さんはあんな役立たずの夫に縛られることはないんじゃないかと、夫なき身辺に現れる男性に改めて目を向けてみたり、追い出された五百助は日頃の妻の一々を煩く思っていたところ、これ幸いと独り身の自由を謳歌して放浪してみたり。それぞれに我が身の自由に思いを巡らせ、彷徨する訳なのだが…。皮肉と親しみを絶妙な塩梅に効かせて登場人物を描く筆致は流石。付録が効いている。2018/11/18