出版社内容情報
庶民にとって高価でも何故か親しみのあるうなぎ。そのうなぎをめぐる人間模様。岡本綺堂、井伏鱒二など、時代物から現代物まで。解説 平松洋子
内容説明
切っても切れない、うなぎと人の物語。恋愛小説から短歌まで。名作を選りすぐった文庫オリジナル。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
KAZOO
143
浅田次郎さんが選んだ鰻に関するアンソロジーです。9編の短篇小説と最後に斎藤茂吉の鰻に関する短歌が16編おさめられています。やはり浅田次郎さんが選んだだけあってほろりとさせるものが多くあります。内海さんと浅田さんの作品が一番印象に残りました。2016/02/22
しいたけ
124
土用の丑の日に因んで大慌てで読んだが、読み終えたのは鰻を食べた次の朝。浅田さん。ああ大好きな浅田様だけれど何てことしてくれんのか。食べたあとだから良かったものの、この先鰻を見るたび食すたび、泣けてくること間違いない。読んでる間も「のほほんと鰻を食べて申し訳ありませんでしたあ」と涙をふきながら懺悔する事態に。どんな話だったかを表す、いい一文がこれ。「話が見えんというのなら、少しだけ教えておこう。師団の敵は米兵でも豪州兵でもなく、飢餓だった」師団長が鰻を口にしない理由を噛み締め、ああそれでももう一枚食べたい。2017/07/26
ぶんこ
50
鰻を扱った短編を浅田次郎さんが選んだ作品集で、初っ端の内海さんの作品は、やっぱ読みやすくてシミジミ良かったです。浅田さんの作品は、きっちりと泣かせてくれました。吉村さんと高樹さんもシミジミ良かったです。斎藤茂吉さんの鰻を題材にした短歌の多さに、鰻大好き感が迫ってきて面白かった。白飯に鰻は日本の宝とは、確かにと頷く。2017/06/21
Shoji
29
ウナギと人の物語です。浅田次郎が選んだ短篇が9編と短歌選が収録されています。グルメ小説ではありません。人間の心のひだを綴ったお話ばかりです。戦後のすさんだ世の中を生きる捨て鉢な女の人生、単身赴任先で不倫をした男の人生、女房子供とソリが合わず身の置き場がない男の人生、等々。しんみりと読ませるお話が多かったです。ウナギは脇役に過ぎず、食されるシーンもあれば、水槽の中で泳いでるシーン、調理されるシーンなど様々ですが、ウナギが物語のいいアクセントとなっていました。面白かったです。2024/10/11
ささのは
24
『人情小説集 うなぎ』というタイトルと、美味しそうな写真に惹かれた。きっとうなぎが無性に食べたくなるだろうと思ったが杞憂だった。うなぎは確かに全作品に出てくるが、タイトルにある人情の方に気をとられてそれどころではない。話がうまい人たちが語ると、波乱万丈な物語でなくともつい聴き入ってしまうものだなと実感する。内海隆一郎と林芙美子の話が好き。浅田次郎の話はあっけらかんと悲惨で、うなぎが今後美味しく食べられるか不安になるほどの強烈なイメージだった。でもこの小説を楽しめる時代に生きているのだから、ありがたい。2016/01/17