出版社内容情報
氷が全世界を覆いつくそうとしていた。私は少女の行方を必死に探し求める。恐ろしくも美しい終末のヴィジョンで読者を魅了した伝説的名作。
内容説明
異常な寒波のなか、私は少女の家へと車を走らせた。地球規模の気候変動により、氷が全世界を覆いつくそうとしていた。やがて姿を消した少女を追って某国に潜入した私は、要塞のような“高い館”で絶対的な力を振るう長官と対峙するが…。迫り来る氷の壁、地上に蔓延する略奪と殺戮。恐ろしくも美しい終末のヴィジョンで、世界中に冷たい熱狂を引き起こした伝説的名作。
著者等紹介
カヴァン,アンナ[カヴァン,アンナ] [Kavan,Anna]
イギリスの作家。1901年、フランスのカンヌ生まれ。ヘレン・ファーガソン名義で長篇数作を発表後、『アサイラム・ピース』(40)からアンナ・カヴァンと改名。不安定な精神状態を抱え、ヘロインを常用しながら、不穏な緊迫感に満ちた先鋭的作品を書き続ける。翌68年に死去
山田和子[ヤマダカズコ]
1951年生まれ。翻訳家・編集者(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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1 ~ 5件/全5件
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
かみぶくろ
117
冷たいかき氷小説。プロットがあるようでないような、悪夢の中をさ迷っているような読感である。氷に世界中を浸食されていくディストピアで、主人公はかつて夢中になったが離れていってしまった少女を執拗に追い求める。この主人公、ぶっちゃけストーカーにしか見えない。作者はヘロイン中毒だったというが、全編が、溢れでるイメージと妄執を物語上にむりやり注ぎ込んでいった印象である。それはメタファーですらない。だがその奔流はすさまじく、畳み掛ける重層的なイメージの連なりと文章の密度は、凍死というより溺死しそうであった。2015/07/28
コットン
91
私から見た少女をめぐる私と長官の話であり、大自然としての氷の物語でもある。 冒頭の給油所の従業員の「くれぐれも用心してくださいよ、あの氷には」という言葉が暗示しているような、凍えるような寒さの連続であり、それは少女の心象風景のような気もした。2018/01/13
(C17H26O4)
88
凍てつく世界に完全に閉じ込められた。物理的な冷たさも恐ろしいほど感じられたが、それ以上に精神的に迫るダークな冷たさや冷酷さがあった。作家と作品に関する解説が序文にあり、導かれるように冒頭から不条理な世界に入り込んだ。悪夢のようなヴィジョンはしばしば唐突に別のヴィジョンと入れ替わってはまた戻り、終わりなく続く不気味な閉塞感をもたらす。物語におそらく結末はない。ある意味始まりもないので何処から読み始めてもアリな気さえする。少女への虐待や陵辱が見え隠れし実のところあまり好みではない。だがしかし、かなり没入した。2022/01/19
アナーキー靴下
76
初めてアンナ・カヴァンの作品を読んだが、今まで出会ったどの本よりも魅力的で危険な本だった。出来事の心象風景、脳内のイメージをトレースしたかのような文章。突飛な場面転換や展開の唐突さに何の不自然さもなく、物語は脳に滑り込んでくる。ふいに表れる暴力的で残酷な言葉も、人間性より遥か手前、刺激に対する反応を言語化したものに見える。この上なく美しいラブストーリーのようでありながら、どこまでも自己との対話のよう。救いの向こうに世界はなく、ただ一面の氷。肉体の檻から離れたまま現実に戻れなくなりそうな、麻薬のような小説。2021/02/15
キムチ
74
悪の手になる未知の兵器、気候変動で変わりはてた地球。一面 雪と氷 白の世界。「私」は夫から逃げた少女を執拗に追い続ける。。頭で考えたら筋に乗れないスリップストリームノベル。重い緊迫感の中を追う者、逃げる者、捉えんとする者 3者が駆け巡る・・まるでRPG。「私」は優しさとは言えない変質的なものを感じさせる∼様々なダークヴィジョンを表したり、少女に感謝の態度を強要したり。少女も「依存、弱者を装う」からか周りは何かと関与する・・かまってちゃん的。世界の終末が近づいてくるラスタで男女は温もりを求めチョコレートを→2025/01/29
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