出版社内容情報
一冊の辞書に、なんと多くの手間と時間がかかっていることか。「日本国語大辞典」編纂に携わった著者がその苦労と魅力を語る。三浦しをんさん推薦。
内容説明
親子三代にわたって国語辞典編纂に関わり、自らも『日本国語大辞典』編集委員を務めた著者が、辞書作りの難しさ、用例採集の大切さ、終わりのない改訂作業について語り、日本語の規範となり得る理想の国語辞典の在り方について考察を巡らせる。一冊の辞書が出来上がるまでの気の遠くなるような時間と手間に思いをはせ、日ごろ当たり前のように使っている国語辞書の奥深さを感じさせてくれる一書。
目次
松井簡治と『大日本国語辞典』
松井簡治の日常こぼれ話
『日本国語大辞典』(初版)の内側
『日本国語大辞典』(第二版)をめぐって
国語辞典の用例について
用例資料にまつわる話
松井驥の歩んだ道をたどる
ピンチヒッター人生
付録 『近代国語辞書の歩み―余説第二章』について
著者等紹介
松井栄一[マツイシゲカズ]
1926年東京生まれ、東京大学文学部卒業。国語学専攻。1959年、武蔵高等学校教諭。1967年『日本国語大辞典』常勤編集委員に就任。尚学図書言語研究所員、国立国語研究所国語辞典編集準備調査委員を経て山梨大学教授、東京成徳大学教授を歴任し、第二版編集に専念(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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壱萬参仟縁
8
110番通報というときには、「売り言葉に買い言葉」(97頁)といえる。権力に丸投げするのだから。これで解決はしない。怨恨になるだけ。報復される恐ろしさもあることを刹那的対応では逆効果となる。時間が経過すればするほど、恨み100倍。辞書編集には、「愚直」が大切だと説かれる(247頁)。日本語には汚い言葉もあるが、できれば使わずに済ませたい。しかし、現実のエゴだらけの人間集団には、汚い言葉、その次が、暴力になりかねない恐ろしさもある。日本語は外国語よりも美しいとはいえ、使う人や時代が変われば変化するだろう。2013/11/27
mft
5
ごちゃごちゃしたタイトルだと思ったが、内容に即していると言って良い。日本国語大辞典の編纂の話と、父・祖父の思い出や残されている文章の寄せ集めと…。辞書作りの話題では用例のための古書収集についてが横道ではあるが面白かった2019/04/08
kem
1
『日本国語大辞典』(小学館)の編集委員をつとめられた松井栄一氏の辞書に関するエッセイ。辞書作りの大変さはさまざまな「辞書本」によって知っていたが、やはり壮絶だ。マメじゃないと無理だ。用例採集のために古今の書籍を集めまくる。各版まで揃えたりする。普通の愛書家とはまたケタが違う。しかしそろそろ、そういった部分ではコンピュータにすべてが揃う時代が来るだろう。その時に辞書に求められるものはなにか? 私はこの筆者のような見識であろうかと思う。2014/03/21
とりぞう
0
『日本国語大辞典』を批判する『近代国語辞書の歩み』を「悪口雑言の限りを尽くした文書」とする筆者の反論である「『近代国語辞書の歩み―余説第二章』について」が収録されているのは興味深い。2014/04/10