内容説明
「八代さん、いくらなら売ってくれる」。朝鮮訛りの男は、唐突にそう話しかけてきた。俺には、売るものなど何もない。だが、北も南も警察もヤクザも、俺がブツを持っていると思っているらしい。家捜しされ、荒らされた部屋。かかってきたのは、「助けて」という、美子からの電話だった。美子を救い、人生を棒に振った事件から十年。彼女の死を知ったとき、俺は犯人とブツの行方を追いはじめる。十年の、ケリをつけるために…!!京都―乱雑に新旧が入り交じる街に、時代に置き去りにされた男たちの哀切が沁みる。颯爽と現われた驚異の新人作家が世に問う、野心的ハードボイルド長編。