出版社内容情報
フカヒレ、北京ダック等の歴史は意外に浅い。ではそれ以前の中華料理とは? 孔子の食卓から現代まで、風土、異文化交流から描きだす。
内容説明
フカヒレの歴史はせいぜい三百年、北京ダックはたかだか百年あまり。ではそれ以前の中華料理とはどのようなものだったのか?主要穀物やマナーの変化、外食業の誕生、好まれる肉の移り変わり、異民族との交流による料理法の変貌―さまざまな観点から描き出される「中華料理」の姿。孔子の食卓から加速度的に進化する現代の料理までを駆け巡る芳醇な中国文化史。
目次
序章 変わる中華料理
第1章 孔子の食卓―春秋戦国時代
第2章 ラーメンの年輪―漢代
第3章 食卓のビッグバン―魏晋・六朝時代
第4章 犬肉を食うべきか食わざるべきか―隋唐時代
第5章 羊肉VS豚肉―宋代
第6章 箸よ、おまえもか―宋元時代
第7章 ああ、フカヒレ―明清時代
著者等紹介
張競[チョウキョウ]
1953年、上海生まれ。明治大学教授(比較文化学)。上海の華東師範大学を卒業、同大学助教を経て日本留学。東京大学大学院総合文化研究科比較文化博士課程修了。国学院大学助教授、ハーバード大学客員を経て現職(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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うえぽん
51
比較文化学者による中華料理史の解説。時代小説等で時代に関わらず似た食事が出てくる不思議と、日本での中国四千年の味との宣伝文句が好奇心を生んだという。フカヒレ、北京ダック、唐辛子入り四川料理、ピータンなど現代中華料理の定番はいずれも百年程度から長くても四百年程度の歴史だという。孔子の時代は粟や黍が主食で、麦は粒食から始まり、西方から粉食文化が入ったらしい。箸も宋代から元代に掛けて横置きが縦置きになったが、ナイフを縦に置くモンゴル文化の影響だろうとする。異文化を受容し続けた食文化史に中国の新たな側面を知る。2024/08/20
ヨーイチ
36
実を言うと「中華四千年の美食の追求」の様な内容を期待していたのだが、冷静に歴史と文化を考えれば、そんな物はコチラの勝手な思い込みで(小生だけかなぁ)フカヒレも北京ダックも結構新しい、てな事実を著者はサラリと述べている。文化的な統一感が有る気がしている、日本人の思い込みは注意が必要だと反省。王朝が入れ替わり、異民族が君臨してきた広大な(これとても中国と呼ばれる地域が伸び縮みしている)地域が一枚岩のわけが無い。上海生まれで同世代で留学経験の豊富らしい著者の公平な論は信頼して良いと思う。続く2022/10/23
Aminadab
23
比較文学研究者が主に文献資料によって書いた中華料理史。必ずしも網羅的ではなく、内容が古い時代に偏って、美味しいものが出てくる明清が手薄な憾みはあるが面白く読んだ。五胡十六国時代に侵入してきた騎馬民族は、遊牧生活に必須のパートナーだから決して犬を食べない。また豚が嫌いで羊が大好き。また清朝の前半の皇帝たちには海鮮を食する習慣がなく、なかなかフカヒレが宮廷料理に現れない。近代の四川省や湖南省で大量に消費されるトウガラシもなかなか文献に出ず、1861年にようやく初出。しかも健康に悪い困った食べ物扱いだという。2022/06/28
Dash-Checker
19
タイトルに偽りなしの中国食の歴史。中国史の流れを知ってから読まないと若干分かりにくいかも? 四川料理は昔は辛くなかったとか、ゴボウは今でも食べられていないとか、興味深いネタがてんこ盛り2024/05/04
ああああ
13
天ぷら、寿司、キムチにピザマルゲリータ、国や地域の特色とされる料理も、その年齢はとても浅い。もちろん世界に冠たる中華料理もまた同様だ。その4千年の歴史に比べてうつろいゆく食の歴史は薄く・浅いようにも思えるが、著者の言うとおりそれを残念がる必要は全くないと思った。あらゆる民族や文化を超えて、食材や料理(と言うより美味しいもの!)の伝播が、人類にとって重要だという証拠なのだから。「邯鄲の夢」において老人が煮ていた粥の中身を気にしたり、故郷の料理名の変化にあわてる著者のエピソードも楽しい。2016/03/25