出版社内容情報
「文明」の本質と時代の課題を、鋭い知性で捉え、巧みな文体で説く。福澤諭吉の最高傑作にして近代日本を代表する重要著作が現代語でよみがえる。
内容説明
維新から間もない激動の時代に書かれた『文明論之概略』は、「人類の目指すべき最大の目的」としての文明の姿を鮮やかに描くと同時に、当時の日本が置かれた状況を冷徹に認識して、「自国の独立」の重要性を痛切に説く。物事の本質を見抜き、時代を的確に捉える知性。巧みな例示とリズミカルな文体。福澤諭吉の最高傑作にして近代日本を代表する重要著作が、いま現代語でよみがえる。
目次
第1章 まず、議論の基準を定めよ
第2章 なぜ西洋文明を目指すのか
第3章 文明の本質
第4章 一国の智徳
第5章 続・一国の智徳
第6章 智と徳の違い
第7章 智徳を行なうべき時代と場所
第8章 西洋文明の歴史
第9章 日本文明の歴史
第10章 自国の独立
著者等紹介
福澤諭吉[フクザワユキチ]
1835(天保5)年~1901(明治34年)。著述家、教育者。「時事新報」発行人。近代日本最大の啓蒙思想家。慶應義塾の創設に力を尽くした
齋藤孝[サイトウタカシ]
1960年生まれ。東京大学法学部卒業。同大学院教育学研究科博士課程を経て、明治大学文学部教授。専門は、教育学、身体論、コミュニケーション技法(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
藤月はな(灯れ松明の火)
78
名前は知っているけど、中身は読んだことがなかった『文明論之概略』。それが現代語で読みやすくなっているのがこの本である。今、読めば、余りの西洋文化への礼賛ぶりに首を捻る。しかし、本書は外国との対等な関係を結ぶべく、国の独立を推奨している。ハリボテとしての文明を目的にするよりもそれを手段にして人々に貢献する事、生得的な徳と後天的な智のそれぞれの効能や規制の大切さ、善人が為す悪と悪人が為す善などを説いている部分が印象深い。2019/06/30
おさむ
53
近代日本史の古典を今さらながら初めて読む。現代語訳が読みやすい。約140年前の思想なのに全く古びていないことに驚愕する。明治の初期にこれだけの主張を展開できる諭吉先生、やっぱりcoolです。さすが1万円札!笑。冷静かつ客観的に日本の置かれた状況を分析し、先ずは自国の独立を最優先させるべきだと説く。自由の気風を重んじ、異端妄説こそが世の中を進歩させる。あの丸山眞男が愛読し、3冊に及ぶ岩波新書の読本を残しただけあります。これからも何度も読み返したい。2017/02/09
姉勤
49
明治8年に著されたとは思えないほどの、人間社会への通底した洞察力。文明とは、文理を進めつつも旧倫を軽んぜず、道徳を深めても教条に溺れず、知の進歩と徳の伸張を両輪として、個人を高め集団に及ぶ。科学技術も法律も伝統も宗教も、人を育てる乗り物であって、それらが主ではないと。付録する西洋文明と日本文明への概論は、最近流行りの、白人的な史観を外れた世界史論を先取りした風にも見える(まあ、戦後に漂白されたか、去勢されたか)。世界大戦も冷戦も共産主義も経ずして辿り着いた結論には、さすが最高額紙幣の顔は伊達ではなく。2017/02/09
道楽モン
38
明治8年に刊行された福沢諭吉の代表作も、まずは現代語訳にて読む。当時の混迷した社会状況下で、自主独立の国家形成を目標に見据え、ひとりでも多くの国民が智恵を獲得することで国家的気風を醸造する必要性を語っている。彼の論旨も、現代語だからこそ容易に理解でき、入口として有り難い。そして今、岩波文庫を片手に丸山眞男『文明論之概略を読む』に取りかかってます。それにしても福澤の例示は、適切で判りやすく、しかもユーモアがある。ダメ出しも手厳しい。哀しいのは、福澤の提言に対して我が国は、まだまだなんだと痛感することだろう。2024/06/05
アミアンの和約
33
明治初期に出版された福澤諭吉の世界批評。同時期に出た学問のすすめと内容に重複があり、またそちらの方が有名なこともありあまり脚光に浴びることはないが、密度としては断然こちらの方が福澤の本領というべきだろう。文明とは何ぞやという話から始まり、西洋と日本の比較、そして福澤の生涯通しての持論である自主独立が語られる。岩波文庫の方は原文なのでやや難解だが、こちらは丁寧な現代語訳版なので断然こちらをおすすめする。2025/03/14
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