内容説明
ヒロインは、なぜこの場面でこのように不可解な行動に出たのか。真実はひとつに見えるが、男女の間ではそう簡単にはいかない―男女の感情の行き違い、誤解、あるいは逆に思いやりによって引き起こされる思いもかけない言動の数々。日本近現代文学の恋愛小説の名作を取り上げ、著者自身の恋愛体験に照らしながら、主人公たちの謎に満ちた振舞いを解明する試み。
目次
『神隠し』藤沢周平
『誰も知らぬ』太宰治
『事件』大岡昇平
『ねむり姫』澁澤龍彦
『三匹の蟹』大庭みな子
『眠れる美女』川端康成
『暗室』吉行淳之介
『妓獲鳥の夏』京極夏彦
『喜寿童女』石川淳
『水の女』中上健次〔ほか〕
著者等紹介
植島啓司[ウエシマケイジ]
1947年、東京生まれ。宗教人類学者。東京大学大学院人文科学研究科博士課程修了後、シカゴ大学大学院に留学、M・エリアーデに師事する。NYのニュースクール・フォー・ソーシャルリサーチ客員教授、関西大学教授などを歴任(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
akinbo511
8
読んだことがある本は1冊しかなかったけれど、あらすじを示したうえで男女の話に持っていくので読みやすかった。どの賞も著者の体験を絡ませながら始まるのも入りやすく良い構成だと思う。芥川の『藪の中』は、いろんな人が謎解きをしている作品だとは知らず、どの人の考えも興味深く、読んでみたくなった。 2014/05/18
とみぃ
5
タイトルの「突然のキス」は、著者の植島さんが、かつてある大学教授の送別会で、三十歳近く年上であったその先生に突然キスをしたという経験談に拠っている。いたずら心であったと植島さんは照れているけれど、そうした逸脱への衝動というか、合理的には説明しきれない欲望というか、そんなものに植島さんは関心を寄せる。特に恋愛においてその秘密は顔をのぞかせるのであり、この本は、そうした逸脱とも思える衝動を描いた作品を紹介することを通して、人間のしようの無さをむき出しにしようとする。あらためて、文学っておもしろい、そう思った。2019/06/24
YH
3
ブックガイドとしても使えるかしら、と思ったけれど、そっちの目的としては微妙。どっちかというとしばしば入る植島先生のちょっとしたモテ自慢が、面白い。うぬぼれ刑事の栗橋先生を思い出す。2012/03/06
YH
1
植島先生の恋愛遍歴、読めば読むほどすごいな。親友や後輩の彼女と関係したり、彼女の友達と関係したり…。かなりフリーダムな貞操感で興味深い人物だな。2017/12/21
ぼっせぃー
1
ネタに使われている作品のチョイスは読書人としての確かなセンスを感じさせられとても良い。埋め草なのではというようなものもあり若干のばらつきはあるが、「神隠し」「ねむり姫」「眠れる美女」「暗室」「水の女」など著者が思い入れの強いとしている作品に対しての読みはとりわけ鋭い。「あたし下駄を取りに行ったんです。いい下駄なのに、忘れましたから」……こういう一文をスッと抜いてきて語ってみていやらしくならないのは、どういうバランス感が必要なんだろう。筆者の女性遍歴の披露については考察のための切り口としてちょっと我慢……。2015/07/01
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