出版社内容情報
16世紀初頭のイタリアを背景に、「君主論」につながるチェーザレ・ボルジアとの出会いを描き、「政治人間」の生態を描き切った歴史小説の傑作。
内容説明
イタリア統一の野望に燃える法王軍総司令官チェーザレ・ボルジアの許へ、フィレンツェ政府は使節として天才的外交官ニッコロ・マキアヴェリを派遣する。チェーザレの魔の手をかわし、共和国の自由を防衛するためだった。大小の都市国家に分裂し、フランス・スペイン両大国の侵略にさらされる16世紀初頭の騒然たるイタリアを背景に、ボルジアとマキアヴェリの知的格闘がはじまる。「政治人間」の生態と機微を描いた歴史小説の傑作を新訳で贈る。
著者等紹介
モーム,W.サマセット[モーム,W.サマセット][Maugham,William Somerset]
1874‐1965。20世紀最大の作家。聖トマス病院医学校で医師免許を得た後、文学の道に転じる。青年の苦悩と自立を描いた自伝的小説『人間の絆』は教養小説の白眉。第一次大戦では、英国政府の密命をおびて戦時下のロシアに潜入、ケレンスキー内閣支援に奔命する
天野隆司[アマノリュウジ]
1938年東京生まれ。翻訳者(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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優希
64
面白かったです。マキアヴェリとチェーザレの政治群像劇と言えるでしょう。共和国の自由を防衛するために、チェーザレのもとに派遣されたマキアヴェリ。その知的格闘は会話が生き生きしていて、現代にも通じるような気がしました。政治に命をかけた人物像を描いた興味深い作品です。2020/10/21
パトラッシュ
59
ルネサンス期の著名な政治家を挙げるのなら、チェーザレ・ボルジアとニッコロ・マキアヴェリは筆頭級だろう。その二人が知略の限りを尽くして頭脳による外交戦を展開するのだから、面白くないはずがない。しかも書くのが自らスパイ活動経験を持つモームとくれば、丁々発止のやり取りが一層迫力を増す。単なる政治劇でなく、女好きのマキアヴェリが一目ぼれした人妻を狙って計略を巡らすのを、こっそり探知したチェーザレが操ろうとするのだから笑える。塩野七生さんの愛読者なら絶対に外せない、読みやすく面白い大人の文学に出会えた喜びを感じる。2020/12/24
星落秋風五丈原
49
今でこそ惣領冬実さんの未だ完結していない連載『チェーザレ』があるが、日本で一気にチェーザレ・ボルジアの知名度が上がったのは、塩野七生さんの『チェーザレ・ボルジア あるいは優雅なる冷酷』とフランソワーズ・サガンの『ボルジア家の黄金の血』あたりか。毒殺、謀略なんでもござれの一族が何とカソリックの総本山のトップの座についた、生涯がまるでドラマのような(ドラマになったが)イタリアの一族、ボルジア家の長男坊。サマセット・モームの描き方は書きたい人物その人を語り手にせず周辺からチェーザレを描く。2018/10/17
syaori
32
マキアヴェリを主人公にした歴史小説です。マキアヴェリが外交官としてチェーザレ・ボルジアの元へ派遣されるところから始まります。当時のフィレンツェは弱小国家で、一方チェーザレ様は飛ぶ鳥を落とす勢い。なかなか胃が痛くなるようなお役目ですが、さすがイタリア男、どんな時でも色事は忘れないようです。かくして物語は人妻攻略と政治的駆け引きの2本立てで進行していきます。そのためどちら付かずになってしまった印象はあるのですが、色恋の部分は喜劇を見ているようで楽しいですし、政治的な押したり引いたりの駆け引きも面白かったです。2016/04/27
コジ
30
★★★★☆ 詩以外何でも書いたと言われるモームの歴史小説。物語の舞台となる14世紀のイタリアは複数の領地・小国に分かれ、鎬を削る日本の戦国時代のような時代。商業国フィレンツェから外交官としてヴァレンティーノ公ことチェーザレ・ボルジアの下に使わされたマキアヴェリ。この男、冷酷にして狡猾、要するに腹黒い。チェーザレも同様。この二人の交渉の流れが読みどころ…かと思ったが、マキアヴェリのもう一つの側面「女好き」を扱ったエピソードにかなりのページが割かれていた。タイトルの「昔も今も」の意味はそっちの話だったのか??2019/12/17