内容説明
「亀鳴く」春の夕暮れ、オス亀がメスを慕って鳴くという空想的季語。勿論亀は鳴かない。「毒消売」越後や越中から来る行商の薬売り。「夜這星」流星の別称。「竃猫」竃にもぐり、暖をとろうとする猫…季節感が大きくずれたり、風習が廃れたりして消えていくたくさんの季語。そんな「絶滅寸前」の季語たちの持つ豊饒な世界を紹介し、新しい命を吹き込む読み物辞典。
目次
春(藍微塵;愛林日 ほか)
夏(青挿;汗拭い ほか)
秋(秋の七草;生身魂 ほか)
冬(青写真;皹 ほか)
新年(稲積む;臼起し ほか)
著者等紹介
夏井いつき[ナツイイツキ]
1957年愛媛県生まれ。俳句集団「いつき組」組長。中学校国語教諭を経て、俳人へ転身。1994年に「俳壇賞」を、2000年には「中新田俳句大賞」を受賞。テレビ、ラジオの出演の他、俳句の授業「句会ライブ」を開催、全国高校俳句選手権「俳句甲子園」の運営にも携わるなど、全国的に活動中(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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がらくたどん
70
今を時めく「いつき」先生の「マイナー季語」辞典。この手の本は見るとついつい手元に置きたくなる。通読する本ではないが「これはアレだ」の宝庫なので長く楽しい。絶滅「寸前」というところがミソ。誰かが斬新かつ巧妙な使い方をすれば息を吹き返す「かもしれない」という可能性を秘めている言葉達。そのうち久しぶりに脚光を浴びる言葉があるかもと思うのも楽しい。小庭の草樹が一斉に元気になり近隣の田んぼにも水が入った。それでも未だボンヤリな季節。「亀鳴く」=「春の夕暮れ」もちろん亀は鳴かない。そのくらいの惚けボケ度。春だから♪2023/04/19
瀧ながれ
30
俳句らしきものをひねり出すにあたっては、季語をいれねばならぬと考えて、歳時記を開いたりする(…こともある)。現在の暦にあわないコトバや、文化技術の変化によって失われたコトバがあり、ここに置かれた「絶滅寸前季語」をひとつずつ拾い読みながら、そもそも「季語」とはなんじゃろなと、迷路に迷いこんでしまったりした。十七音しか使えないのに十五音もある季語とか、なに考えて季語なのかしら? その言葉からの発想が固定化されてしまい、使う俳人がいなくなったから絶滅寸前、という理由があり、俳人のプライドを感じて笑ってしまった。2018/03/23
ピンガペンギン
26
「春」の項目を読みました。楽しかったです。著者をテレビで拝見しているとおりの毒舌と俳句への愛あふれる文で、絶滅しそうな季語を解説していく。俳句仲間(この言葉に和気あいあいの雰囲気を感じる。松山に転勤してきた人の居酒屋での句会の話も出ていた)の句も載せられている。「佐保姫」奈良の佐保山を神格化した女神。「佐保姫に耳をかさぬきこりかな」(日本昔話みたいと酷評…。)「佐保姫の口笛らしき風きたる」(句会で上位に)「桜狩」(桜を求めて歩くこと。何十キロも歩いていたのか?)もいいなあ。2025/04/06
ピンガペンギン
21
絶滅しそうな聞いたこともないような季語をテーマにしたエッセイ。ひとまず夏の項目のところだけ読みました。「毒消売」新潟県、富山県からくる娘さん二人組で食中毒の薬などを売って歩いた。夏だから毒消売で、他の季節はほかの季語で薬売りがあるのかな?「百物語」これは、やろうと思ったら今でもできますね。イベントもあるんじゃないでしょうか。2024/07/20
てん
15
もはやいつから読み始めたのかわからないくらいで、季語単位に読めるのでちょこちょこ読んだ。これは本当に季語なのか?というものや、なぜこの季語がこの季節なのか、といったもの、十七音だけの俳句でなぜこんな長い言葉が季語なのか、といった疑問だらけではあるが、読み物としては面白い。絶滅する季語もあれば、新たに加えられる季語もあるのだろうか。今後はちょっと一息入れたいときにワンポイントで読めそうだ。2023/04/18