内容説明
大正3(1914)年5月、東京・高輪に東宮御学問所が設けられた。それは乃木希典の建言をもとに、裕仁親王(昭和天皇)の帝王教育のために作られた学校だった。大正10年3月に閉じられるまで、親王はそこで5人の学友とともに学び、同年11月には摂政となる。最高の人材を投じた学校で、帝王学はどのように教えられていたのか。当事者への取材を交えて7年間の歴史をたどる。
目次
第1章 生徒六人の小さな学校
第2章 御学問所の青写真
第3章 二人の候補者
第4章 杉浦重剛の生い立ち
第5章 選ぶ人と選ばれた人
第6章 杉浦、教壇に立つ
第7章 陰のブレーンたち
第8章 帝王倫理の中身
第9章 裕仁親王の人間形成
第10章 歴史・博物・フランス語
第11章 エピローグ
著者等紹介
大竹秀一[オオタケシュウイチ]
1934年、山形県生まれ。東京大学文学部卒業。産経新聞東京本社に入り、社会部で遊軍、宮内庁、文部省などを担当。1971(昭和46)年秋の昭和天皇・皇后の訪欧を同行取材した。その後、社会部次長、論説副委員長を務め、麗澤大学教授となる。現在は麗澤大学名誉教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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筑紫の國造
1
これはなかなか面白い。タイトルにその名はないが、この本の主人公は昭和天皇に「倫理」の御進講を行った杉浦重剛その人。一般的には無名だが、昭和天皇の人格形成の重要な時期に「帝王学」を授けた重要な人物だ。昭和天皇の評伝は数多いが、人格形成の面から光を当てた作品はあまり多くはない。後年の昭和天皇の思考や行動を知るのには、欠かせない著作の一つかもしれない。文章も非常に読みやすく、詳しくない人にもおすすめ出来る。2016/07/29
sasha
1
御学問所の歴史と言うより、倫理を進講した杉浦重剛の評伝と言ったところか。それでも楽しめる。2009/12/24
Sara Nagai
0
杉浦が施した倫理の授業としての帝王学の内容が詳細に書かれていた。「桜花」や「ナポレオン」「大義名分」など様々なテーマが取り扱われていたことが非常によくわかった。ただ、官僚でもない在野の人間であった杉浦が、天皇の人生観に直接かかわる倫理といった非常に重要であり、観念的でもある教科の教員として選ばれたのか、そのあたりを逸話などではなく、もっと当時の資料を使いながら論理的に突き詰めて欲しかったように思う。2014/06/03