ちくま文庫<br> 兎とよばれた女

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ちくま文庫
兎とよばれた女

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  • サイズ 文庫判/ページ数 190p/高さ 15cm
  • 商品コード 9784480424440
  • NDC分類 913.6
  • Cコード C0193

内容説明

本書は、『失われた庭』と並ぶ代表作のひとつであり自伝的要素の強い作品。兎を主人公とし、神と呼ばれる、見えない存在との極めて精神性の高いやりとりと、その背後に見えかくれするこの世的なもの。迷いと戸惑い。絶対的な愛。「不滅の少女」と呼ばれた著者の真骨頂、初の文庫化。

著者等紹介

矢川澄子[ヤガワスミコ]
1930‐2002。東京生まれ。作家・詩人・翻訳家。東京女子大学英文科を卒業後、学習院大学独文科在学中に同人誌『未定』に参加。59年、仏文学者で作家の澁澤龍彦と結婚し、仕事の協力者として活躍するが68年には離婚。以後も、文学活動に従事(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。

感想・レビュー

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ヴェネツィア

276
三重の入子構造といった構成をとる。とはいえ、それ自体は複雑というわけではない。むしろ、その構造は中が透けて見えるくらいにシンプルだということもできる。現実を幻のあわいに包んだ序章と終章。そして、スミの国の物語では自分が自分であることの孤独が語られ、さらにその核心部に位置する「かぐや姫に関するノート」では、自分が女であることの不条理とやるせなさが語られる。それは、ある種のニヒリズムのようでもあり、また無常観のようにも思えるものだ。「じゃんけんで負けて蛍に生まれたの」―本書の本質を見事に表現した一句だ。2015/09/28

新地学@児童書病発動中

120
ファンタジーの翻訳家として名高い矢川澄子の自伝的な小説。自伝といっても、リアリズムではなくて、ファンタジーや童話的な内容。全編を通して描かれるこの世界への違和感が心に残った。私も同じようなものを抱えてると言えるかもしれない。ファンタジーの衣をまとわなければ、もっとどろどろした話になったかもしれない。それをしなかったのは、矢川さんのはにかみと文学的な素養だったのかもしれない。2014/03/23

YM

72
二階堂奥歯さん恋愛ものベスト15より。著者は澁澤龍彦の元奥さん…。実生活を寓話的に書いてるらしいので、なかなかに複雑な心境。話の筋はすんごい捉えずらい。え?なになに?ってとこが多々ある。ただ、主人公(おそらく著者)は、ものすごい束縛されて、女としての喜びも否定され、それでも好きで好きで大好きで幸せで尽くしたけど、結局、わたしってなんなの?みたいなことが綴られる。そして気づいたら別世界に行っちゃった…。この本と、新しい出会いで何となく浄化できたんかな。澁澤さんの言い分も気になるけど、これ以上は下世話だね。2014/12/19

yn1951jp

45
まるで貝合わせの貝…こまかな凹凸をぴったり埋めるわたし…そんなちゃちな翼でとんだつもりになっているおまえがかわいいねえ、と…我に返ったときは、すでにあとのまつり。かつて兎がおのれひとりの苦難と思いこんで苦しみ、迷いぬき、あげくの果てに現実を断念せざるを得なかったこと。それは…兎ひとりの身にかぎられたものではなかった…私はいまこそ救われる…ひかりか。それともよろこびの涙か。「いづくへか帰る日近きここちしてこの世のもののなつかしきころ(晶子)」矢川は、かぐやの如く自ら選んで地上世界に見切りをつけたのでしょう。2015/02/22

なる

38
特定の人物像を想起させる序章の「翼」、そこから神様と兎の住む小さな島国の物語として御伽噺のような話が展開されて行く、はずが、途中に「かぐや姫」に関するノートが登場するという入れ子構造になってから「かぐや姫」の再構築を図るも物語としての混乱は容赦なく、いつしか「兎」も「かぐや」も混沌とした渦の中に巻き込まれて行くよう。むしろ作者自身の生き写しのようでもあり。のちの運命を考えてみたときに、ある種この登場人物たちの選ぶ答えに出ていたのかもしれない。冒頭の「彼に」というたった一言からなる序文がまた。2023/06/11

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