内容説明
陽光に耀く地中海の浜辺のホテル、まどろむ二人の恋人を眺めながら青年は、遠い北欧の街での幸福な時間に思いを馳せる…ジョイスの手法をとりいれて描く表題作に、コロンビアからパリにやってきた美少女の出現が、コレージュの男子生徒たちに引き起こす惑わしに満ちた動揺を、神秘的な感動にみちたエピソードとともに描く青春小説『フェルミナ・マルケス』を併せ収める。魅惑の作家の淡く美しい名作二篇の新訳。
著者等紹介
ラルボー,ヴァレリー[ラルボー,ヴァレリー][Larbaud,Valery]
1881‐1957。フランスの小説家、詩人にして翻訳家、批評家。ヴィシーに生まれ、幼時からヨーロッパ各地を旅した。豊かな語学力を駆使して外国の文学作品を渉猟し、作家たちとも交流があった。ボルヘスやジョイスを逸早く紹介したことでも名高い
石井啓子[イシイケイコ]
翻訳家(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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きりぱい
4
表題作より「フェルミナ・マルケス」の方がよかった。2017/03/23
水蛇
2
ラルボーの筆が冴えわたる「フェルミナ・マルケス」がここに埋もれてるのはやっぱりもったいない…。せめて表題作と並べてほしいな。子どもの誇りが傷つけられ、甘く宥められながらどこへもいけない。昔もそうだったわけだし、現代でもそうだし、200年後もたぶんそう。2024/09/26
ひとみ
2
表題作は旅先で恋人とその女友だちについてあれこれ思う心の動きを丹念に追った内容でとっつきにくかったが、同時収録の中編「フェルミナ・マルケス」が大変面白かった。中南米の富豪の息子たちを抱える名門校に美少女が出入りするようになったことから生徒たちに起きたさざ波を描いた小説で、王様気質の者から不良にスネ夫にいじめられっこ等様々なタイプの少年の姿が活き活き描かれている。特に主人公的な位置にいるローマやラテンの文化に心酔している優等生のレニオの演説や思考に笑ってしまう。その分ラストが寂しさが際立って忘れがたい。2015/05/24
H2A
2
「フェルミナー」は国際色豊かなコレージュに現れたフェルミナ・マルケスをめぐる少年たちの憧れ。初恋の淡さより彼らの葛藤が鮮やかに描写される。特にレニオの心理描写には客観的な見方を許さないほど惹きこまれた。表題作は読むのに少し時間を要した。もう少し大人の視点からの恋人をめぐる「内的独白」。異なる作風だが通底するところもある。どちらも良い小説だった。これでも自称「群小作家」なのだから・・・。2012/01/07
む
2
十代の思い上がりと敗北。恋のあまやかさと苦さ2009/08/20