内容説明
名品発掘!「全集」には収められているけれど、なかなか読み返す機会のない小品。類まれなる才能を十分に開花させることなく早世した作家たちの心癒される短篇。野呂邦暢「水晶」、久生十蘭「春雪」、大坪砂男「外套」、久坂葉子「猫」など、とくに味わい深い12篇を集めたとっておきの文庫オリジナル・アンソロジー。
著者等紹介
大川渉[オオカワワタル]
1959年生まれ。早稲田大学卒業(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
mii22.
65
ほぼ、仕事の休憩時間にざわついた社員食堂の片隅で一篇づつ日にちをかけて読んだ。日常から意識が別のところへ飛んで私だけ特別な世界へいくような優越感に浸れるひとときだった。お気に入りは、情景描写が瑞々しく鮮やかで思わず二度読みした「繰舟で往く家」。残酷だけどなぜか惹かれる「可哀相な姉」と「外套」。雰囲気が好きなんだな十蘭の文章「春雪」。そして何度でも読みたくる久坂葉子の「猫」。2018/11/15
(C17H26O4)
63
どれも味わい深くて一篇一篇読み応えがあった。それぞれの持つ湿度が、肌に触れて感じられるようだった。人の持つ情念は生々しくて、熟れて芳香を漂わせる。悦びは、誰かの哀しさや憎しみ。またその逆も。もしくは、人知れず熟れて落ちる。どの短篇もとても良かったので選び難いですが、敢えてあげるなら、自分が女だから、岡本かの子『川』、久坂葉子『猫』を。2019/03/12
tomi
39
大川渉編、日本文学の短篇名作集。主に早世した作家のマイナーな作品が収められており、帯には「心が透きとおる」とあるが、寧ろ心がざわつくような作品が多い。一日1~2篇ペースでじっくり読みました。中でも小山清と牧野信一の作品が好きだが、別に感想をアップしたので他の気になる作品を挙げると、田中英光の破滅型私小説「離魂」は壮絶な作品で、太宰治の墓前での自殺を仄めかしている事に驚く。太宰(作中では本名の津島)の遺族と自分の妻子がショックを受けるから死なないと書いているのだが… →2020/01/25
メタボン
29
☆☆☆☆ 衝撃を受けた2作品。渡辺温「可哀相な姉」唖の姉のある習慣が悲劇を生む。渡辺温という作家は全く知らなかったが、この短篇は凄い。田中英光「離魂」破滅に向かう凄まじい私小説。他、川を挟んでの男女の逢引が切ない牧野信一「繰舟で往く家」、文学少女の恋愛観にきゅんとする久坂葉子「猫」が良かった。鮮やかな文章表現に満ちた岡本かの子「川」は再読。2019/10/19
くさてる
28
ひれ伏しました。こういうアンソロジーに出会うと、小説というものが人間に与えるものの大きさに動揺してしまう。それくらいの粒ぞろいでした。昭和の古めかしい小説は苦手とか思っていた足元を掬われて転がされた思いです。小山清「犬の生活」の愛らしさよ、岡本かのこ「川」の青年の純情の美しさ、娘の残酷さよ、渡辺温「可哀相な姉」のまさに題名そのままのすごみよ、山川方夫「他人の夏」の少年と女性の邂逅が意味するものよ、野呂邦暢「水晶」の、ああもうこの「水晶」の残酷さ!鮮烈さ!もどかしさ!そんな風に身もだえしました。お勧めです。2016/11/05
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