出版社内容情報
科学技術で生活は便利になった。効率ばかり求める社会はどこかおかしい。私たちは生きものなのだから。進歩ではなく進化に、新しい未来のかたちを考えよう。
内容説明
科学で生活は便利になったけれど、効率や結果ばかり求められるのはどこかおかしくないかな?何だか息苦しいよね。だって私たちは機械じゃなくて生きものなのだから。基本を変えずに、しかし驚くほどの多様さを生み出して38億年続いてきた「進化」を軸に、生きもの目線で私たちの未来を考えよう。
目次
第1章 20世紀科学の最大の発見の一つ―遺伝子の本体であるDNA
第2章 人間は生きものである
第3章 生命科学から生命誌へ
第4章 現代社会の問題点を明らかにする
第5章 便利はとてもよい…だろうか
第6章 進歩でなく進化を考えよう
第7章 生きものに学び私たちとして生きよう
第8章 生きものに学ぶ これから
著者等紹介
中村桂子[ナカムラケイコ]
1936年東京生まれ。JT生命誌研究館名誉館長。理学博士。東京大学大学院生物化学科修了。ゲノムを基本に生きものの歴史と関係を読み解く生命論的世界観の知「生命誌」を提唱し、1993年JT生命誌研究館を創設。2002~20年同館館長。『自己創出する生命』(毎日出版文化賞)ほか著書多数(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
アキ
113
「地球に優しく」「自然を守ろう」という時、人間は自分も自然の一部だということを忘れがちになってはいないか。「人間はいきものであり、従って自然の一部である」という考えは、1952年DNAが遺伝子の本体であり、すべての生きものに共通していることがわかってきて生まれたもの。人類は一律な社会に進歩したが、進化した生命は多様性を選び、お互い関係し合いながら循環している。著者の提示する生命誌絵巻では、人間も生きもの全体のつながりの中にいるわたしなのです。科学技術社会だけではなく、生きものと共につくる社会を目指すべき。2022/12/22
k sato
18
人間は機械じゃない!人間は生きものの仲間だ!生命誌論を開拓した著者。まるで、風の谷のナウシカのような人だ。科学と技術が一体化した現代は、つねに「進歩」を求めるようになった。効率や簡便を追求し、自然離れしていくことに著者は警鐘を鳴らす。一方、生命科学の登場は、「生きものが生きていること」を追究できるようにした。今こそ、自然と生きものが各々の特徴を生かしながら、共に上手に暮らす生き方を模索するべきなのではないか。そこに科学が生かされてほしいと願う著者。利便性に現を抜かす自分がイヤになる。「生きもの」とは何か。2023/06/19
kumako
16
科学を通して良い生き方を考える。①広範囲に学問をミックスさせて幸福について考えるといつ答えが出るのか?科学に特化して考えるほうが速くないか?いや、この「速い」を求めることが間違いなのか?②著者が挙げている現代社会の問題は知能という特別な能力を持つ“ヒト”が「欲望」を追求した結果のもの。ヒトがヒトで無くなれば解決するのか?知能があるヒトだからこそ解決できるのか? という2点が疑問でした。 最終的に「愛があれば解決するのでは」という宗教的な言葉しか思いつかず…。2022/10/23
joyjoy
9
今日の朝刊「タイパ社会 豊かな時間はどこに」という記事を読んだあとだったので、5章の「生きものにとって大事なのは過程(プロセス)」、「生きものとは手のかかるもの」、「自然は決して思い通りにはなりません」といった言葉が特に心に残る。今回図書館で借りた他のQブックス「不思議なテレポート・マシーン…」や「世界一くさい食べもの」とどこかつながるところもあり、生きものとは?時間をかけるとは?と、またまた新たなQが。そして、新しい年にはなにか敢えて手間や時間のかかることをしてみよう、という気持ちになっている。2022/12/30