出版社内容情報
近代日本を代表する哲学者の重要論考を精選。理論的変遷を追跡できる形で全体像を提示する。『日本文化の問題』と未完の論考「生命」は文庫初収録。
1 ~ 1件/全1件
- 評価
本屋のカガヤの本棚
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
壱萬参仟縁
32
「日本文化の問題」(1940年初出)に絞る。学問的精神とは、公明正大の精神に基づくものでなければならない(358頁)。物の真実に行くことによって、真に創造的、真に生きる(365頁)。日本精神は何処までも正々堂々公明正大でなければ(367頁)。社会と云うのは、矛盾的自己同一的歴史的世界が全体的一として自己自身を形成する自己形成の形である。行動は歴史的社会的で個物が独立的である所、個物が生きる所に、社会の生命がある(401-2頁)。理性は何処までも歴史的理性(403頁)。2021/08/24
roughfractus02
7
本書は「善の研究(第一編・第二編)」「場所」「永遠の今の自己限定」「私と汝」「行為的直観」「日本文化の問題」に未完の論考「生命」を加えたアンソロジーだが、著者の主要概念を扱う論文全ては収録されてない。が、著者独特の文体を味読するには良い構成に思える。例えば、理解しやすい「日本文化の問題」に著者の哲学を歴史や文化の文脈でマップすると、他の論文のトーンがその意味空間をなす句読点の合間に概念にならないイメージを立ち上げ、呼吸する身体に瞑想が意識を向けるように著者が触れたろう無へと読者を誘う感覚を生むかに思える。2025/01/17