内容説明
『藤氏家伝』は、奈良時代後半(760~762年頃)に成立した藤原氏の家史。上・下巻から成り、上巻では始祖である藤原(中臣)鎌足とその子貞慧、下巻では藤原不比等の長男である武智麻呂の事績を伝える。『日本書紀』と『続日本紀』のあいだに編纂されたが、それら正史にはない独自の記述を含むことから史料的価値がきわめて高く、7~8世紀の歴史を理解する上で欠かせない史書である。本書はその初めての現代語訳。巻末には本文(漢文)と訳者による解説を付す。文庫オリジナル。
目次
上巻(鎌足伝;貞慧伝)
下巻(武智麻呂伝)
『藤氏家伝』本文
感想・レビュー
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やいっち
68
藤原氏初期の歴史が記された伝記。藤原鎌足と定恵と藤原史(藤原不比等)の伝記(著・編者は恵美押勝(藤原仲麻呂))。及び藤原武智麻呂の伝記を記したもの(著・編者は僧延慶)。何と言っても日本の古代の基本を作った藤原氏。『日本書紀』も、実質、藤原氏が作った。予想していたように、自画自賛で歯が浮くような美辞麗句の連続。一度は読んでおきたかった。それにしても、中臣氏は何処から来たのか。 2020/01/27
はちめ
11
とても読みやすい現代語訳でありがたい。本家伝は8世紀後半の成立で日本書紀には影響を与えていないが、日本書紀編纂時にはこのような家伝がいくつもあり、それらをつなぎ合わせて作った部分も多かったのだと思う。特に壬申の乱のように勝利に貢献した豪族は自身の一族への報奨を獲得する意味もあり、この手のやや都合の良い記録を作成し朝廷に提出したのだと思う。もちろん、本家伝ほど整ったものではなかったとは思うが。☆☆☆☆★2020/10/24
紫草
9
現代語訳なので私でもすらすら読めます。鎌足伝は、有名な中大兄皇子との出会いの話とか乙巳の変とか、あの有名な話のこれが元なのね、っていうのばかり。ドラマチックでおもしろい。不比等伝が現存しないのは残念。貞慧という人は、鎌足の長子なのに出家したり情報が少ない謎の人。これは失われたのではなくて元々これしか書かれてないのかしら。不思議。そして武智麻呂。地味なイメージの人だけど、まあ清々しいくらいの褒めっぷり。臆面もなく、とか謙遜とかいう言葉は仲麻呂の辞書にはないのか(^^;2022/04/05
perLod(ピリオド)🇷🇺🇨🇳🇮🇷🇿🇦🇵🇸🇾🇪🇸🇾🇱🇧🇨🇺
7
現代語訳と原文(返り点なし)。藤原氏の祖である鎌足、その子の貞慧、不比等の長男・武智麻呂についての伝記。編纂を命じたのが武智麻呂の子・仲麻呂(恵美押勝)との事で、歯が浮くくらい美辞麗句で潤色されまくっている。解説は独自の記事を期待する風だが、殆ど無いのでは。『扶桑略記』の記述から「天智天皇暗殺説」を思いついた某作家の轍は踏まないようにしないといけない。この場合は『扶桑略記』の時点でそうした風説があったのだろうけど、道教に無知だと道教的潤色と気がつかないのだろう。→2023/06/22
perLod(ピリオド)🇷🇺🇨🇳🇮🇷🇿🇦🇵🇸🇾🇪🇸🇾🇱🇧🇨🇺
7
藤氏家伝の現代語訳が文庫で読めるとは。原文付き。内容は短いものの、記紀との比較で独自表現がある。また不比等伝だけ伝わっていない事実に色々妄想が働く。2019/08/24