出版社内容情報
「島」とは孤独な人間の謂。透徹した精神のもと、話者の綴る思念と経験が啓示を放つ。カミュが本書との出会いを回想した序文を付す。解説 松浦寿輝
内容説明
本書は「島」を統一テーマに、愛猫の生と死、ヴェネチアやナポリで過ごした日々、想像のなかのインド、地中海への憧憬など、人生のかけがえのない瞬間について綴られたオムニバス形式の作品。全篇を虚無感と充足感が渾然一体となって貫く。経験への繊細なまなざしを通して、生の本質を啓く哲学的エッセイの傑作。本書との出会いを回顧したカミュによる序文を付す。
目次
空白の魔力
猫のムールー
ケルゲレン諸島
至福の島々
イースター島
想像のインド
消え去った日々
ボッロメオ島
見れば一目で…CUM APPARUERIT…―プロヴァンスへの開眼
著者等紹介
グルニエ,ジャン[グルニエ,ジャン] [Grenier,Jean]
1898‐1971年。パリに生まれる。哲学者ジュール・ルキエ研究で学位を取る。アルジェ高等学校および大学予科哲学教授、パリ大学美学教授を務める。“N.R.F.”誌執筆陣の最長老でもあった
井上究一郎[イノウエキュウイチロウ]
1909‐99年。大阪府に生まれる。東京帝国大学文学部フランス文学科卒業。東京大学名誉教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ふるい
17
あまりにも完全で、穏やかな自然を目にした瞬間。人は鎖から解き放たれ空白に陥る。まさに、その瞬間だけが、生である。千分の一秒のあいだ手にした幸福の記憶があれば、終わりのない退屈な日々を乗り越えられる気がする。猫のムールーの跳躍もまた、われわれに生きることを思い出させてくれる。2020/06/18
コスモス
10
あの有名なカミュの大学での師であり、この本の序文ではカミュがとても美しい文章を書いているのに、あまり知られていないのがもったいなさすぎるほど素晴らしかった。読んでいるうちに、旅に出て人生について考えてみたくなった。大学生の4年間でいろんな場所を旅したい。今までの単行本の発行部数はそこまで多くはないと思うけれど、それでも2019年に文庫化されたのに納得するほど良い本です。哲学的な文章が好きな人やルソーの「孤独な散歩者の夢想」が好きな人には特におすすめ!2022/05/22
ラウリスタ~
9
カミュの師として知られるらしい、思想家グルニエが、地中海的なものに関して書いたエッセイ集のようだ。井上究一郎とグルニエとの写真が掲載されている。流れるような文体で、正直何について書いているのか分かりにくい。例えば、「乾いて硬いギリシャ」と「湿ったインド」とを対立させ、半ば空想上のインドについて色々書いたりしているようだが・・、流し読みすると「西欧は理性で、インドは夢」的なオリエンタリズム全開にも読めてしまうので困る。流し読み。2019/07/05
Tenouji
6
満を持しての、哲学エッセイ、と期待したのだが、訳文が合わず、辛い。途中で断念。2020/03/15
haikaino
5
「何歳のころだったか? 六歳か七歳だったと思う。菩提樹のかげにねそべり、ほとんど雲一つない空をながめていた私は、その空がゆれて、それが空白のなかにのみこまれるのを目にした。それは、虚無についての、私の最初の印象だった。」 「ほとんど完全な無関心、澄みきった無感動、──目ざめぎわの睡眠者の状態だった。」2019/04/10