出版社内容情報
人間にとって疑いえない知識をもとめ、新たな形而上学を確立したデカルト。その思想と影響を知らずに西洋精神史は語れない。全像を語りきる一冊。
内容説明
科学者であったルネ・デカルトは、自然科学の礎たりえる知識をもとめ、第一哲学=形而上学の再構築に乗り出す。なにひとつ信じられるものがない「懐疑」を出発点に、それでも絶対疑えない原理「我あり」へ、更に「神あり」「物体あり」へと証明をすすめる。本書はその哲学をまず『省察』『哲学の原理』など主著を追ってわかりやすく解説。ついで『世界論』『人間論』を通して、近代哲学の理解に不可欠な自然学的論理を説明する。スピノザ、ロック、バークリ、ライプニッツ、カント、フッサール等々、その後のすべての西洋哲学に強烈な影響力を持ち続けたのは何故か。
目次
第1章 デカルトの生涯―一五九六年~一六五〇年
第2章 『省察』を読む(1)―第一省察~第三省察
第3章 『省察』を読む(2)―第四省察~第六省察
第4章 形而上学を支える自然学―物体の本性と観念の論理
第5章 デカルトの「循環」?―「自然の光」だけを頼りとして
第6章 主観主義の伝統と分析哲学の起点―デカルト哲学の射程
著者等紹介
冨田恭彦[トミダヤスヒコ]
1952年、香川県生まれ。京都大学文学部哲学科卒。京都大学博士(文学)。ハーバード大学客員研究員などを経て、京都大学名誉教授/同志社大学講師(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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内島菫
19
実在する物体と心の中にある観念としてとらえた物体の二重存在説は、つまりは一即多、多即一ということであり、人間のあり方を人間自身がどうとらえているかということの表れではないかと思う。個人的に、巨大ロボット考察の出発点としてデカルトを選んだのは彼の心身二元論の故であり、その心身二元論はさらに実在論と観念論に支えられていたことが本書によって見えてくる。また、デカルトの循環論とされるものの著者による細かい検討によって、デカルト自身が循環ではないと否定している言い分に特別違和感がないということも確認される。2022/08/18
うえぽん
18
西洋近代哲学の巨人デカルトの思想を入門講義調にまとめられた本。「我思う故に我あり」という観念論と徹底的な物体懐疑から始まり、神の存在の肯定と、自然学を援用した「広がりを持つ物体」の存在の再肯定等を通じ、独自の哲学を牽引し、後世に多大な影響を与えたと評価。数学的に計測可能な大きさと、感覚により人によって異なる形で把握される匂い・色等を峻別して、後者は明晰に把握されないとしたという点は、以前読んだエクスキュルの環世界の立場からすれば、より相対化されてしまうように思える。難解な哲学をとっつき易く解説した良書。2023/09/09
またの名
11
「長い推論を続けていると(私など、短い推論でもそうなのですが、あはは)前提や、それと結論とのつながり方を、忘れてしまうことがありますよね」とデカルトに対する循環論ではとの批判を自虐交じりに検討。近代哲学の大御所をシリーズで解説するスタイルを最近確立した著者による説明は、表現的実在性と形相的実在性といったどっちが何だか混乱して分からなくなる用語を理解できるよう書いてるだけでなく、歴史的背景を押さえるため神聖ローマ帝国に触れたらそれについて基本から解説し、手取り足取りの教育的配慮。分析哲学系からの視点も新鮮。2019/07/27
Bartleby
10
デカルトの哲学には他者がいないという指摘はなるほどと思った。デカルトはあらゆるものを疑った末に、「私」が疑う間は少なくとも疑う「私」は存在しているという明晰判明な事実から出発した。自然科学を根っこで支える形而上学(第一哲学)を再構築するためだ。しかしその論証にはデカルトが他方で研究していた数学・物理学の方法の影響が見られる。科学を支えるものであるはずの形而上学を科学の知見によって構築しようとする矛盾。デカルトが近代科学の父であるゆえんは、そういう意味でもあったのだな。2022/09/11
mstr_kk
7
野田又夫『デカルト』(岩波新書)はとてもよかったけれど、腑に落ちないところもあったので、出たばかりのこの本を読みました。これら2冊はセットで読むのがよさそうです。僕がおかしいと思っていたのは、たとえば、「われ思うゆえにわれあり」が原点だとして、そこから神の存在証明に行くとき、「われあり」以外のことを利用しちゃっているところなんですが、この本はちゃんとそこを批判してくれますし、歴史的なデカルト批判も紹介してくれます。僕がひっかかったいろいろな点は、多くの人が問題としてきた点だとわかり、安心しました。2019/02/28
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- 和書
- たかーいたかい 3冊