出版社内容情報
言語を習得した人間は、自身の<いま・ここ>の体験に対し、客観的に捉えた世界の優位性を信じがちだ。しかしそれは本当なのか?渾身の書下ろし。
内容説明
古来、西洋哲学は確固とした普遍的「実在」を求めてきた。本書は、そうした客観的・統一的な脱自己中心的世界としての「実在」ではなく、対立概念である「不在」こそが「真にあること」ではないかという問題に取組む。言語=理性を習得してしまった人間は、客観的・統一的な「実在」こそ普遍的であり、それを、多元的・自己中心的な「私の世界」よりも優位に置く図式に、なかなか抗うことができない。そして、自分が住んでいる世界の相貌を語りつくすことができない。それはなぜなのか。不在を生み出す時間、自己と他者というトリック等、数々の哲学のアポリアに迫る、渾身の書下ろし。
目次
序章 実在と不在
第1章 不在というあり方
第2章 不在と“いま”
第3章 不在としての過去
第4章 不在としての私
第5章 観念としての客観的世界
第6章 多元的原事実
終章 不在と無
著者等紹介
中島義道[ナカジマヨシミチ]
1946年福岡県生まれ。東京大学法学部卒。同大学院人文科学研究科修士課程修了。ウィーン大学基礎総合学部修了(哲学博士)。電気通信大学教授を経て、現在は哲学塾主宰(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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テツ
23
現在から振り返り過去を想起すること。措定的な過去と非措定的な過去。今この瞬間には存在していない過去を捏造し「私」の過去を想起できるということこそが私を私たらしめる。「私」がその他大勢の他者と明確に異なる一点は、無意識に行った過去の行為(睡眠やら酩酊やら)を「眠っていた」「酔っていた」などと自己帰属させながら全てを引き受けられるということ。僕には時間論も存在論もぼんやりとしか理解出来ないけれど面白い。今ここにいる僕には過去の残滓を思い出せる存在としての意味しかないのかな。2019/10/05
Ex libris 毒餃子
4
カント哲学によった「不在」に関する論考。パースペクティブを基礎として「不在」という存在を措定しつつ、それを存在論や時間論にもっていく。超越論的な手法をとるのでフッサールも俎上に上がる。ちなみに、時間論では大森荘蔵も批判対象になる。系統的に書かれてないが、知的好奇心をくすぐられる良質な存在論・時間論の本。2016/08/10
秋さんと愉快なギターたち
1
久々のなかよし先生の本。わかったようなわかった気になっているだけのような状態で読み終える。他の本も読めば、もう少し綺麗な道筋がみえるかも。カント勉強してからリトライしたい。カント、カントかあ。むむ。2016/09/14