出版社内容情報
哲学はプラトン抜きには語れない。近年の批判を乗り越え、普遍性や人間の生をめぐる根源的な思索者としての姿を鮮やかに描き出す画期的入門書!
内容説明
真理を絶対視せずに普遍性を思考することは可能か。プラトン思想の新たな展望を拓く画期的入門書!独自の切り口からプラトン思想の核心とその現代的意義を明快に説く。
目次
序 反=プラトンと現代
第1章 哲学のはじまり(「普遍性」について;「原理」「概念」「パラドクス」 ほか)
第2章 ソクラテスからプラトンへ(プラトンとその時代;ソクラテスの裁判―「魂への配慮」 ほか)
第3章 イデア(絶対イデア主義について―『パイドン』;「三角形のイデア」と「諸徳の対立」―認識の普遍性とは ほか)
第4章 エロス、美、恋愛(恋(エロス)の「本質」とは?―『饗宴』その1
美の「ほんとう」について―『饗宴』その2 ほか)
第5章 政治と哲学の理想(「イデア説」のパラドクス―『パルメニデス』『ソピステス』;プラトン言語思想の核心―『テアイテトス』 ほか)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ゲオルギオ・ハーン
26
西洋史への理解を深めることを目的にまずはプラトンから読むことにしました。別の本で概要と哲学史の大まかな流れを読んでいたおかげで割と苦もなく読めました。難しい用語が出てきますが煙に巻くような書き方ではなく著者の問題意識を絡めつつ出来るだけ分かりやすく配慮して書かれているので読み進めるうちにだんだん慣れてきました。プラトンの経歴、著作を時期別に分けて解説、最後にプラトン哲学が哲学史においてどんな位置付けなのかを書いているという構成も非常に気に入りました。2021/09/11
さえきかずひこ
6
第4章が抜群に面白くて魅了されたが、理解したとは言えず。類書に当たりつつ、再読したい本。2017/01/09
よしくん
5
どうして諸イデアの中で最高のイデアが「真のイデア」ではなく「善のイデア」なのか?という疑問に答える第3章が凄い。プラトンの時代はヘーゲル が言うような理想的ポリスではもう無くて、徳や生き方の対立が深刻となっていた。様々な相対的徳そのものについて直接論じても対立するだけだ。ならば諸徳を徳たらしめる共通の普遍的根拠を考えるしかない。するとそこに「善への希求」が見えてくる。だから、善のイデアが諸徳や諸存在、認識可能性の根拠となっているのだ。本書はクソ抽象的な内容を可能な限り分かりやすく説明してくれる。良書。2024/10/04
unpyou
5
ポストモダン思想が作ってきた「絶対的『真理』を求める誤った西洋形而上学の元祖」というプラトン像を書き換えるプラトン論。彼のイデア論は固定的真理を立てるものでない。創世物語以外の仕方で世界を言葉で説明せんとする時「子理屈をこねれば何でも"ある"とも言えるし"ない"とも言える」問題が生じるが、この不毛を越えるには価値の普遍性を構築する要があり、善き事(善のイデア)に向け人知は働くという原理で価値のコンセンサスを構築したのがイデア論という説明と読めた。文庫版あとがきには短くまとめられておりここから読んでも良い。2017/04/20
itosan04
5
あまり厚くはない本だけど、中身はぎっしり詰まった1冊。プラトニック・ラブの語源の考察部分だけでも非常に面白かった。プラトンは哲学者の中の哲学者だと思っていたけど、「純愛」の故郷でもあったというわけか。それと竹田青嗣の理路整然さもすごい。難解な概念をわかりやすく書こうとする名人ではないだろうか。2016/04/01