出版社内容情報
ポツダム宣言を受諾した「8月14日」や降伏文書に調印した「9月2日」でなく、「終戦」はなぜ「8月15日」なのか。メディアの検証から戦後を問い直す。
内容説明
「戦没者を追悼し平和を祈念する日」制定が閣議決定されたのは、敗戦から三十七年が過ぎた一九八二年四月十三日である。その編成プロセスを新聞の「玉音写真」、ラジオのお盆中継、学校教科書の終戦記述から徹底検証したメディア史研究の金字塔。世界のVJデイ(九月二日)と向き合い、戦争と平和を論じるため、新たに三篇を増補。
目次
序章 メディアが創った「終戦」の記憶
第1章 降伏記念日から終戦記念日へ―「断絶」を演出する新聞報道
第2章 玉音放送の古層―戦前と戦後をつなぐお盆ラジオ
第3章 自明な記憶から曖昧な歴史へ―歴史教科書のメディア学
おわりにかえて―戦後世代の「終戦記念日」を!
補論1 「八月十五日」の民意
補論2 「八・一五革命」再考
補論3 「九月ジャーナリズム」を提唱する
著者等紹介
佐藤卓己[サトウタクミ]
1960年生れ。1989年、京都大学大学院文学研究科博士課程単位取得退学。東京大学新聞研究所助手、国際日本文化研究センター助教授を経て、京都大学大学院教育学研究科准教授。著書として『「キング」の時代』(岩波書店、サントリー学芸賞)、『言論統制』(中公新書、吉田茂賞)など多数ある(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
HANA
51
現在の終戦記念日は八月十五日というのが定着しており僕自身もそれを疑った事はなかったのだが、本書ではポツダム宣言受諾の八月十四日ミズーリ号調印式の九月二日に比べ何故その日だけがクローズアップされたのかを綿密に検証している。写真の捏造から始まり、玉音放送体験、ラジオやマスコミ、教科書の変遷を辿るその考証は、その過程を見ているだけでも十分に面白い。五五年体制まではそれらの日もクローズアップされていたのだけど、その時期から右派と左派のもたれ合いで成立したという結論は現在の目から見ると何とも言えないものがあるけど。2015/09/23
nnpusnsn1945
49
実は8月15日が終戦記念日としているのは日本国内ぐらいである。中国が影響をうけて「15日」を逆輸入した点は興味深い。他国は9月としているようだ。歴史問題はこうしたところにも要因があるだろう。なお、教科書問題についても多く割かれている。また、15日以前に終戦の知らせが来ていたとの記録も残されている。そういえば、『憲兵よもやま物語』で著者(階級は憲兵伍長)が終戦を8月11日に知ったと書いていたのを思い出す。2022/05/23
ステビア
29
終戦の日のグローバル・スタンダードは9月2日。ではなぜ日本だけ8月15日なのかというと、①「ラジオを聞いた」という体験=記憶の重要性、②お盆との重なり、③「8・15革命説」を信じたい左派と敗戦を忘却したい右派のもたれ合い。著者は8月15日を「戦没者追悼の日」、9月2日を「平和祈念の日」とすることを提唱する。2023/12/25
モリータ
18
◆著者は京大教授(メディア論)。新書版(2005)に補論を加え2014年刊。概要・ポイントは本文抜粋をコメント欄に。◆序章は「玉音写真」の疑わしい出処、第1章は報道による「八・一五終戦」認識の1955年を画期とする定着過程、第2章は「玉音放送=八・一五終戦」認識の古層となるラジオでの盆踊り・法要・野球中継の変遷、第3章は歴史教科書の記述の変遷を分析。実証データのある第2,3章は論文的に読めるが、調査漏れの経緯の書かれる序章など、適度な私語りがあって完全に研究書スタイルでもないのが読み進め易さでもあるか。2019/08/30
Ex libris 毒餃子
16
メディア論から見た終戦史観の形成について。非常に示唆に富む本でした。歴史的な出来事は自然発生的ではなくメディアを通して形成される『想像の共同体』で示された理論が実測されている。お盆や甲子園と結びつくのも日本の共同体としてのあり方に結びついている。良本。2023/09/09