出版社内容情報
法とは何か。ルールの秩序という観念でこの難問に立ち向かい、法哲学の新たな地平を拓いた名著。批判に答える「後記」を含め、平明な新訳で送る。
内容説明
法とは何かを問い返し、巨大な影響力を誇る不朽の名著。初版への批判に応えた「後記」も含め、ついに文庫化!
目次
第1章 執拗な問いかけ
第2章 法、指令、命令
第3章 法の多様性
第4章 主権者と臣民
第5章 一次ルール、二次ルールの組み合わせとしての法
第6章 法秩序の基礎
第7章 形式主義とルール懐疑主義
第8章 正義と道徳
第9章 法と道徳
第10章 国際法
後記
著者等紹介
ハート,H.L.A.[ハート,H.L.A.] [Hart,Herbert Lionel Adolphus]
1907‐92年。20世紀を代表するイギリスの法哲学者。オクスフォード大学を卒業後、租税や信託を扱う法廷弁護士として活動し、第2次世界大戦中は諜報機関MI5で働いた。45年、オクスフォード大学に復帰して言語哲学研究にたずさわり、52年に法理学の教授職に就く。穏健な法実証主義の立場から法の特質をめぐる精緻な理論体系を構築し、長く衰退期にあった英米系の法哲学に隆盛をもたらした
長谷部恭男[ハセベヤスオ]
1956年生まれ。東京大学法学部教授を経て、早稲田大学大学院法務研究科教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
masabi
24
オースティンの法命令説を批判的に検討し、法には命令以外にも役割があることを示す。法の中核には一次ルールと二次ルールがあり、二次ルールの究極の根拠は法律家がそのルールを受容することにある。ここから法律と道徳の必然的連関は切断され、ただ偶発的な重なりがあるのみとなる。イギリスの法哲学者ということで日常言語学派の影響を受け、抽象論でなく言葉の使い方の分析や日常生活に根付いた法から議論が始まる。ただし、解りやすいかといえば、やはり難解な一冊だろう。2016/08/06
壱萬参仟縁
23
3版は’12年初出。服従の習慣と法の継続性(098頁~)。服従は威嚇に支えられた命令通りに行動し、権威への敬譲をも示唆する。服従するということばは、裁判官が法秩序の認定ルールを適用してある成分規定を妥当な法として認定し、紛争の解決にあたってそれを使用したとき、彼がしたことを適切に描写してはいない(186頁)。すべての人の福利を同様に促進したり、すべての人にとって同様に好ましい社会改革や法はごくわずか(264頁)。権力の公的な濫用を明晰に直視し対決するために必要なのは、 2015/01/13
はっせー
19
10日間かけて読み終わりました! 内容は法実証主義の系譜に属するハートさんの考えをまとめたものです! かなり難しい内容であり、この内容を理解するにはかなりの法学の本を読まないといけないなって率直に思いました! 特に法と道徳といった内容はソクラテスの弁明に出てくる悪法もまた法なりという考えを出発点にしている なので法哲学を勉強するときにもこの本は重要だと考えました!2018/12/03
ハイちん
16
「どうして法律(ルール)を守らなくてはいけないのか」という問いに関する本として読んだ。法律の遵守に関して了承しているものの、なんで? と言われると答られない。ホッブズは「万人による戦争状態を避けるには、主権者による統御と国民の臣従が必要だから」と答え、ぼくもそれで納得していたが、それだけでは説明できない事態もあること、ナチスの法のように道徳に反する法も存在しうること、ルールを受容する者とルールを観察するものは根本的に立ち位置がちがうが、それでもルールのもとに共存可能であるという見解を本書は示してくれた。2016/08/10
孤独な読書人
6
かなり難しい。再読の必要性あり。2017/11/08