出版社内容情報
辛亥革命前夜、疾風のように駆け抜けた美貌の若き女性革命家秋瑾の生涯。日本刀を鍾愛した烈女秋瑾の思想と人間像を浮き彫りにした評伝の白眉。
内容説明
清朝末期の混乱極まった政治状況のもと、疾風のように駆け抜けた美貌の若き女性革命家秋瑾(しゅうきん、1875‐1907)の評伝。革命のためにのみ己れのあることを信じて日本に留学、東京で孫文の中国革命同盟会に参加。帰国後、苛烈な革命運動に身を投じ、辛亥革命前夜、浙江省紹興で武装蜂起するも、志果たせず清軍に斬首された。魯迅との関連、さまざまな革命家との確執のなか、日本刀を鍾愛した烈女秋瑾の思想と人間像を浮き彫りにする。以後の革命運動の精神的支柱となった秋瑾の鮮烈な生涯を多彩に描いた評伝の白眉。巻末に、鶴見俊輔による武田泰淳の魅力を語った「主人公とは誰か」を収録。
目次
第1章 秋風秋雨人を愁殺す
第2章 なかば血痕なかば涙痕
第3章 紹興の雨
第4章 「謀反人は誰じゃ」
第5章 落水狗と共に
第6章 猪の叫び響く
著者等紹介
武田泰淳[タケダタイジュン]
1912‐1976年。東京生まれ。小説家。東京帝国大学支那文学科中退。1934年、魯迅の弟周作人の来日を機に竹内好、増田渉らと「中国文学研究会」を創設。43年、初期の代表作『司馬遷』を刊行(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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まどの一哉
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武田泰淳の筆致はけして一様な歴史叙述だけではなく、テレビ番組「逃亡者」を例にとったり、マンガ風の会話形式も使ったりと、身軽で肩肘張らず面白い。魯迅や秋瑾の故郷紹興の取材も織り交ぜながら、その後自身がおしゃれなテレビ番組に出演したときの落胆にも触れる。この身軽さが魅力だ。やはり手練の文章を追う心地よさ・小気味よさというものがないと読書体験も寂しいものになる。2015/12/10
Jirgambi
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随想というか評伝形式だったので、新書として期待した自分にはやや冗漫でした。ただwikiや論文以外で秋瑾、徐錫麟に詳しいのはこの他に無いのかもしれず、それにテーマは清朝末の革命運動の一部としては面白い。2016/02/13
さとうしん
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著者の表現を借りれば、イプセン流の「人形の家」などどこにも存在しない激動期の中国で、死後に革命の女神という人形に仕立て上げられた秋瑾の物語。当時の革命党が西太后や光緒帝をどう見ていたかについては、確かによくわからないところがある。2014/09/28
Sin'iti Yamaguti
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秋瑾の評伝ではない。雑誌に連載された随想をまとめたもの。武田泰淳の秋瑾への思いは感じられるものの、辛亥革命当時の中国情勢はもとより、秋瑾その人についての十分な知識がないと、読んでもさっぱり頭に入らない。2023/12/14
tokumei17794691
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・中国の秘密結社の本に引用されていたので、興味を持ち購入。・中国の近代革命史は、魯迅の名を辛うじて知っている程度だったので、理解しづからった。・秘密結社の入会式が、中国の近代化を目指した魯迅が組織し、横浜でのわりに、かなり古風だったこと、満州族排撃を唱えた光復会の殺害リストに、著者同様にその象徴たる西太后と光緒帝の名がないことは意外だった。・中国の革命家たちは、いくら日本が他のアジア諸国に先立ち近代化・西洋化に成功したとはいえ、日本によく留学する気になったな。2021/06/06