出版社内容情報
ゾロアスター教の聖典『アヴェスター』から最重要部分を精選。原典から訳出した唯一の邦訳である。比較思想に欠かせない必携書。
内容説明
シルクロードを通じ、通商の民ソグド人によって中央アジアに広く伝えられた、拝火教ことゾロアスター教。その聖典『アヴェスター』は世界最古の宗教経典とされ、「ヤスナ(祭儀書)」「ウィーデーウ(除魔書)」「ヤシュト(神々への讃歌)」などからなる。本書はそのうち最重要といわれる、ヤスナの中の韻詩文を中心に精選し、原典から訳出した唯一の邦訳である。ゾロアスター教は唐の都・長安でも信仰される一方、その“善悪二元論”“一神教”などの思想は、キリスト教や西洋思想、仏教にも大きく影響したと言われる。古典としてのみならず、比較思想にも欠かせない必携書。
著者等紹介
伊藤義教[イトウギキョウ]
1909年山口県生まれ。イラン学者。文学博士、京都大学名誉教授、日本オリエント学会名誉会員、浄土真宗本願寺派明恩寺第17世住職。福井中学、姫路高校を経て、京都大学文学部入学、梵語梵文学を専攻。榊亮三郎、足利惇氏に師事。京都大学退官後は京都産業大学、大阪外国語大学、東海大学でも教鞭を執った。1996年京都に没(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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てれまこし
7
終末論の元祖ということで読んでみた。善悪二神のあいだの闘争、救世主降臨、最後の審判、千年王国の到来という終末論の要素が出そろっているが、全体の教義においてはそれほど中心的な位置を占めるわけではない。神話的要素あるがより神学に近いと言えそう。だが、むしろ言葉自体に呪術的な力を認めるシャーマニズムに近いものも感じる。散文の翻訳では消失せざるをえないが、恐らく内容よりも言葉の響き自体に重きが置かれているのではないか。詩文を重んじるペルシア文明だが、詩はやはり神の讃える祝詞や呪文から発展してきたのかもと思わせる。2019/10/22
壱萬参仟縁
5
アヴェスター解釈で、根本の聖典・本典とする説と、誡命・誡典(誡=戒)とする説がある(文庫解説244ページ)。東西交易で繋ぐ思想という位置づけでは、繋ぐ発想に重要性を感じた。花嫁の台詞で、「あたくしはあなたがたのためにこの方に誠実をもって侍(かしず)きましょう―してそ[の誠実と]はよってもって父のために献身し また夫のために、牧養者たちのために」(082-3ページ)云々と続く。こんな感じのお嫁さんの将来は謙虚な生活になりそうな気がした。イラン文学。現代、核のテロ連盟で北朝鮮と繋がるとはやりきれないものだが。2013/02/18
エチゴヤ
1
ペルシャというのはこころ惹かれるところがあって、アヴェスターという言葉の響きもなんとなくどきどき。で、ずっと気になってはいたのですが近所の本屋さんでたまたま売ってたので買ってみました。古代ペルシャの祝詞的な何か。訳に漢語が多かったのでイマイチ違和感が気になって没入しきれませんでしたが、とりあえず町のそんなに大きくもない駅前書店で外国の古代の呪文みたいなのが自国語訳で買える日本という国は、いうなれば変態なんじゃないかと思いました(たぶん褒め言葉)。2014/07/14
舞
0
筑摩古典文学全集『ヴェーダ・アヴェスター』のアヴェスターのみ版(ウィーデーウ・ダート、ヤスナ、ホーム・ヤシュト等の抄訳)だが、現在日本語訳としてはこれか岡田明憲氏、木村鷹太郎氏の本ぐらいしかないので読みにくくても仕方ない。これを読む前にせめて、メアリー・ボイス氏や青木健氏等の本を読んでおいた方が内容が理解しやすい。
thuzsta
0
解説は前田耕作2012/07/18