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ちくま学芸文庫
平家物語の読み方

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  • サイズ 文庫判/ページ数 270p/高さ 15cm
  • 商品コード 9784480094049
  • NDC分類 913.434
  • Cコード C0191

出版社内容情報

琵琶法師の「語り」からテクスト生成への過程を検証し、「盛者必衰」の崩壊感覚の裏側に秘められた王権の目論見を抽出する斬新な入門書。

内容説明

「祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響きあり」に始まる名調子によって、『平家物語』は今も人々の心を魅了している。私たちは通常、それを文字によって理解しているが、実はそれは琵琶法師の語りを通して地域や階層を越えて流通し、中世を通じて日本列島の歴史的な共同性を作り上げることになった。しかも、武家政権を王朝の秩序に組み入れるという王権の側の隠された意図は、現実には破綻したとはいえ以後の武士の動向に大きな影響を与えた。「語り」から「文字」へのテクスト生成の過程とその意味を綿密に検証し、日本史と国文学の境界を超える斬新な入門書。

目次

はじめに―歴史の時間と物語の時間
第1部 歴史の構想(祗園精舎;清盛と重盛;頼朝の挙兵;源平交替史)
第2部 反転する世界(終末の不安;怨霊・天魔・物の怪;テクストの流動)
第3部 平家物語の生成(前「平家」の発生;鎮まらざるもの;悪人の救済;建礼門院の物語)
付録 琵琶法師の位置(身体の刻印;穢れと聖性;異形の王子神;「伊勢平氏はすが目なりけり」;母と子の神;語りの主体)

著者等紹介

兵藤裕己[ヒョウドウヒロミ]
1950年、名古屋生まれ。84年、東京大学大学院博士課程修了。その後、埼玉大学、成城大学を経て、学習院大学教授。文学博士。1996年、『太平記“よみ”の可能性』でサントリー学芸賞を受賞する。専攻は鎌倉・室町時代の文学と芸能。各地の口頭伝承の実地調査を行い、歴史とフィクションの関係に迫る(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。

HANA

62
滅茶苦茶面白く一気読み。我々が文字として読んでいる『平家物語』を語りとして読み解いていく部分、特に九州の盲僧との関連や何故琵琶法師が女性の法号である〇一を付けるのか。通常悪役とされる清盛が単なる悪に止まらぬその魅力と鎮魂としての平家物語。頼朝の挙兵が当初将門の乱と重ね合わされていたのが、源氏と平家の争いに縮小されさらには後の世における源平交代思想に至るまで王権に収斂されていく様等、どこを読んでも興味深い箇所ばかりである。『平家物語』自体は未だ未読であるが、抱いていた漠としたイメージに形が与えられたよう。2022/06/27

佐島楓

37
レポートを書くにあたって大変参考になった。中世日本のイメージがかなり固まった。2016/09/08

1.3manen

9
義仲挙兵は当時の貴族の日記にほとんど記されていない(068頁)。敗残兵を記したのは、『玉葉』(069頁)。大納言吉田経房の日記、『吉記』が義仲軍京都接近の様子を、次のように記す。「源氏、十郎蔵人行家と称する者、すでに伊賀国に入る(七月十六日の条)」(070頁)。あとがきによると、歴史とは、事実(史実)としてあたえられるのではなく、過去のできごとをいかに物語るかという語り方、叙述の仕方の問題だ、とする(249頁)。叙述のために、物語・小説と、史家の著述との境界はあいまいだとする。過去の真実はかくも雄弁なり。2013/08/29

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2
面白すぎて読むのにめっちゃ時間がかかった。しかし非文字表現による物語の営為が結果的に抵抗に全部権力と非権力という両義性を保持させていたのなら、それが『日本』ってものの歴史なら、次に選択されるのは文字表現による認識の中での可変的な物語の形成とそれによる非権力の場の構築、なんじゃないかなあ。デリダとか読めばいいのかなあ。2020/10/04

りょく

1
あとがきから読むとその問題意識がわかりやすいのだろうが、大きく分けて『平家物語』のもつ歴史構造と、文字テクスト化する前の『平家物語』とその正典化の構造について論じる。後者については先生の『琵琶法師--異界を語る人々--』に詳しかったと思うが、難しくて未だによくわからない。ホカヒビト→山伏といった移動するモノ語りの語り部たちが比叡山と結びついたこと、同じく『平家』を語った琵琶法師たちが当座形成にあたって上皇の庇護を受けたことで権威化したのだと大まかに理解している。違っていたらご指摘ください。(コメントへ)2022/01/01

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