ちくま学芸文庫<br> 民衆という幻像―渡辺京二コレクション〈2〉民衆論

電子版価格
¥1,430
  • 電書あり
  • ポイントキャンペーン

ちくま学芸文庫
民衆という幻像―渡辺京二コレクション〈2〉民衆論

  • ただいまウェブストアではご注文を受け付けておりません。
  • サイズ 文庫判/ページ数 516p/高さ 15cm
  • 商品コード 9784480093851
  • NDC分類 914.6
  • Cコード C0121

内容説明

冬の夜、結核療養所で聞こえた奇妙な泣き声。日中衰弱しきって運び込まれた母娘は、朝を待たずに逝った。それを知った著者は、娘の体をさする瀕死の母親のやせた腕を幻視する―「小さきものの実存と歴史のあいだに開いた深淵」、それは著者の原点にして終生のテーマとなった。近代市民社会と前近代が最深部で激突した水俣病闘争と患者を描く「現実と幻のはざま」、石牟礼道子を日本文学に初めて現れた性質の作家と位置付けた三つの論考、大連体験・結核体験に触れた自伝的文章など39編からは、歴史に埋もれた理不尽な死をめぐる著者の道程が一望できる。

目次

小さきものの死
六〇年安保と吉本隆明・谷川雁―大衆像の問題をめぐって
民衆論の回路
義理人情という界域
現実と幻のはざまで
死民と日常
石牟礼道子の世界―講談社文庫版『苦海浄土』解説
石牟礼道子の時空
石牟礼道子の自己形成
山河にかたどられた人間〔ほか〕

著者等紹介

渡辺京二[ワタナベキョウジ]
1930年京都生まれ。旧制第五高等学校を経て、法政大学社会学部卒業。評論家。河合文化教育研究所特別研究員。主な著書に『北一輝』(毎日出版文化賞受賞、ちくま学芸文庫)、『逝きし世の面影』(和辻哲郎文化賞受賞、平凡社ライブラリー)、『黒船前夜』(洋泉社・大佛次郎賞受賞)などがある

小川哲生[オガワテツオ]
1946年宮城県生まれ。大和書房、JICC出版局(現・宝島社)、洋泉社を経て、現在フリー編集者。40年間に企画編集した書籍は400冊になる(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

勝浩1958

7
『小さきものの死』の編における「願わくは、われわれがいかなる理不尽な抹殺の運命に襲われても、それの徹底的な否認、それとの休みのない戦いによってその理不尽さを超えたいものだ。」という決意や『現実と幻のはざまで』『石牟礼道子の世界』『石牟礼道子の時空』『石牟礼道子の自己形成』の編で示された氏の女史への想い、また『「サンクチュアリ」の構造』での解説にわたしは完全に魅了されてしまった。渡辺氏が強く薦める、石牟礼女史の『苦海浄土』はぜひ読んでみようと思う。2014/05/21

HANA

6
テーマが絞られていた一巻とは違い、幅広い分野の文章が収録されている。巻頭に納められた「小さきものの死」、僅か4頁の小品であるが近代や思想が何を切り捨ててきたかが一晩の体験を通じて語られる傑作。ただ本巻全体としては『苦海浄土』も三部で語られる本も未読、水俣病についても社会の教科書に記された以上のことを知らない身としてはわからない部分が多々ある。こっちの不勉強が悪いんですけど。2011/08/17

マウンテンゴリラ

3
歴史にならない歴史、小さきものの死や、死民としての水俣病患者を通して、近代化に伴って日本人が失ってしまったものに焦点をあて、その根底にある民衆共同体の倫理、歴史を浮かび上がらせようとする著者の取組に、虚しさや挫折感を感じつつも、限りない共感を覚えた。細部、特に文学評論的な部分については、私自身の教養不足のため消化できない部分が多かったが、歴史というものが客観的な事実の積み重ねとすれば、個人的にすべてを語り尽くことは不可能であり、所詮、認識の範囲で描かれる物語にすぎないということを踏まえれば、→(2)2015/07/27

chanvesa

3
石牟礼道子さんについて宮沢賢治に近いということはなるほどと思えた。この議論と巻頭の「小さきものの死」はつながっていくような気がする。また渡辺京二さんがなぜ、コミュニティを背景とした革命を目指した西郷や北一輝を取り上げたかもわかるような気がするし、『逝きし世の面影』を書いたのかも納得できる。ただし、大衆論については後半の「大衆の起源」が面白い(初期の大衆論は上から目線的だ)。フォークナー論は怖くて読めない『サンクチュアリ』ではなく『八月の光』で書いていただきたかった。2013/05/28

陽之理

2
編者が言うように、小さき者の死、は筆者の原点とも言える。石牟礼道子さんの本も読んでみたくなった。ちょうど父親の世代で、ひと世代前の思想体系を知る上でも今の僕にちょうどいい。2017/12/20

外部のウェブサイトに移動します

よろしければ下記URLをクリックしてください。

https://bookmeter.com/books/3389808
  • ご注意事項