出版社内容情報
名画ながら謎の多い《聖マタイの召命》。この絵を様々な角度から丁寧に読み解いてみる。たった1枚の絵画からあふれて尽きぬ豊かなメッセージを受け取る。
内容説明
バロックを代表する画家カラヴァッジョの名画『聖マタイの召命』。この謎の多い絵画に込められた豊かなメッセージを受け取ろう。美術をみる目を助ける基礎的かつ普遍的な知識を紹介し西洋美術史の豊かな世界に誘う一冊。
目次
第1章 カラヴァッジョの時代と美術(宗教改革と世俗美術のはじまり;カトリック改革と宗教画の再生 ほか)
第2章 『聖マタイの召命』とは(サン・ルイージ・デイ・フランチェージ聖堂;聖マタイ伝 ほか)
第3章 マタイはどこか(マタイ問題;マタイはどちらか? ほか)
第4章 回心と復活(パウロの回心;第一バージョン ほか)
第5章 死と召命(聖ペテロの否認;お迎えと殉教 ほか)
著者等紹介
宮下規久朗[ミヤシタキクロウ]
1963年名古屋市生まれ。東京大学文学部卒業、同大学院修了。現在、神戸大学大学院人文学研究科教授。美術史家。2005年『カラヴァッジョ 聖性とヴィジョン』(名古屋大学出版会)でサントリー学芸賞などを受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
アキ
83
良書。カラヴァッジョの『聖マタイの召命』を論じる書なのだが、30年間の著者の研究だけでなく、愛娘の死からこの絵の光と神の存在にまで思いを馳せ、読後感はまるで一冊の物語を著者と旅して終えたかのような充実感がある。1980年代からマタイ問題の議論で脚光を浴びるカラヴァッジョのこの絵は、聖年1600年以降変わらず飾るローマのナボーナ広場裏のサン・ルイジ・デイ・フランチェージ教会を、30年前には極わずかであった観光客が大挙して押し寄せる程の名所に押し上げている。プロテスタントに対抗したカトリック改革で、バロック⇒2020/03/16
ユーユーテイン
19
聖書をよく知らない自分には、「聖マタイの召命」という絵画は縁遠いものだった。しかし本書を読み終えた今は、この絵画が美術史を理解するための視座となるだろうと感じる。1600年という記憶しやすい年に、写実を極めたカラバッジョによって「聖マタイの召命」は描かれた。この絵画から読み取れる、画家の人生、歴史的背景(バロックの幕開け、カトリックの改革、プロテスタントの職業への意識など)、画材や技法の変遷、光源、ポーズなどについて、著者が丁寧に説明してくれる。願わくは、スライドを見ながら、著者の生解説を聞きたい。2021/06/19
Francis
18
宮下規久朗さんの新著。カラヴァッジョの名作「聖マタイの召命」を中心にカラヴァッジョの作品を論じる。「聖マタイの召命」には様々な見方があること、カラヴァッジョがキリスト教の奇跡を内面的なものとして考え、それを可視化した作品を描いていたことなど、カラヴァッジョ研究家の宮下先生による考察はとても参考になった。宮下先生が「天職」「召命」について論じている文章には宮下先生が今なお信仰について模索し続けている気持ちが表されているように感じたが、どうなのだろうか。宮下先生にもう一度お目にかかって聴いてみたいものです。2020/05/04
あっきー
16
✴3 初宮下、カラヴァッジョは名前を聞いたことがあるだけでよく知らなかった、風神雷神を読んで興味が出てきたのだが無頼画家?!だったり、絵も信者に奇跡を信じさせる迫力があることが分かりやすく解説されていた、絵が小さいので大きい画集と一緒に読めば良かったが、自分にとっては最注目のお気に入りの画家になった、「カラヴァッジョの作品は聖書の一場面を目の前で現実に起こっているかのように臨場感をもって表現したものでしたが、それは見る者のいる空間で実際に起こっているのです」2020/09/05
ジュンジュン
13
「聖マタイの召命」~精巧な写実主義、光が分かつ明暗のコントラスト、風俗画を思わせる登場人物達と古の衣を纏ったイエスとの対比。指さすイエスの後背から差し込む光は、バロック時代の到来を寿ぐ初日の出のようだ。新時代の旗手に相応しいと思うのは、技巧面だけではなく、実際に設置される場所の自然光をも計算に入れて描かれているところ。今も同じ所(ローマ・サンルイジデイフランチェージ聖堂)に展示されていて大人気だとか。見たい‼2024/01/19