内容説明
数学がわかるということはどういうことだろうか。数学者になる人はとび抜けた理解力の持ち主なのだろうか。いや、問題を解こうと何度も失敗をくりかえし、それでも考え続けられる人が数学の専門家だという。じつは数学嫌いだった中学生時代を経て、非線形数学の第一線で活躍した著者が、中・高校生や数学になじみの薄い人たちにも「私の数学のおもしろさ」を伝えようとした労作。第1部で数学という考え方を暮らしの中のことばで語り、第2部では自然現象や社会現象には広く見られながら、学校では学ぶことの少ない非線形方程式の興味深さをてねいにひもとく。
目次
第1部 数学という考え方(岡村先生のこと―論理とことばについて;数学がわかるということ;数学のあらさについて;数学のきちょうめんさ―現代数学における3つの立場;数学と世界のみかた)
第2部 食うものと食われるものの数学(対話とモデル―マルサスの人口論;細菌の時間―指数と対数;変化をとらえること;食うものと食われるものの数学―ヴォルテラの理論;数学は文化である)
著者等紹介
山口昌哉[ヤマグチマサヤ]
1925‐1998年。京都生まれ。京都大学数学科卒業。京都大学工学部教授、理学部教授、理学部長をへて同大学名誉教授。理学博士。専攻は非線形数学、ことに非線形偏微分方程式の数値解析。生物科学や社会科学への応用にも関心が深かった(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
オザマチ
12
小手先の計算テクニックなどではなく、「数学はどんな学問か?」を説明するのは意外と難しい。著者が書き上げるのに時間がかかったというのも納得。2022/05/04
オザマチ
8
再読。数学は数学のためだけにあるわけではない。2025/04/19
nagata
4
だいたいテストの答案かき上げたその瞬間から、テストのことが頭から抜け落ちていく凡人中の凡人にも、頭にじわじわとしみ込んでくる。これだけ丁寧に書かれた数学の本は本当に稀有なもの。一分野にこだわりぬいての書き下ろしながらも、数学での頭の使い方が端々に貫かれているように思う。微分方程式と差分方程式とのつながりのあたりは緻密すぎて改めて再読しつつ深めていきたい。2024/10/06
タカオ
3
前半は数学の考え方について書かれている。後半は指数・対数と微分・積分を使ってマルサスの人口論について書かれている。前半の”数学のあらさについて”はおもしろかった。「柿の木に実が15個なっています。そこへ雀が8羽、椋鳥が5羽飛んできました。ハイ、全部で28になりました。」柿も雀もムクドリも一緒くたで数として捉えるという例が新鮮だった。後半は数式展開が中心で、あれをいちいち追っていくのは大変だったので、少しズルしてわかったつもりになって読み進めてしまった。2013/08/25
仮ッ子
3
後半部分、数式が出てきたあたりから、当然さっぱり付いていけなくなった。が、確かに数学は、世界にアプローチする手段のひとつ。残念なことに私には使いこなすことが出来ないけれども。柿も椋鳥も雀も、みんなあわせて28個にしちゃうとか、厳密なだけだと思っていた数学のイメージが打ち壊された。うーん、これで仲良くなれたらもっといいんだけどね。2011/03/03