内容説明
物理理論に対してあくまで数学的美しさを求め続けたディラック。その理論から帰結するアイディアや世界観は、反粒子、磁気単極子(モノポール)、巨大数仮説など、未知の着想と予言に満ち満ちたものであった!若き日に目の当たりにした量子力学誕生の瞬間から、永久に膨脹し続ける宇宙のモデルに至るまで、想像力が産み出した独創的な仕事の数々をコンパクトに解説、「天才ディラック」がその全体像を垣間見せる晩年の名講義。新訳。巻末に「モノポールを求めて」(荒船次郎)を付録として収録。
目次
第1章 量子力学の発展
第2章 量子電磁力学
第3章 モノポール
第4章 正エネルギーの相対論的波動方程式
第5章 宇宙論と重力定数
著者等紹介
ディラック,P.A.M.[ディラック,P.A.M.][Dirac,Paul Adrien Maurice]
1902‐1984年。イギリス、ブリストル生れ。理論物理学者。1928年に量子力学と相対性原理とを結合した“ディラック方程式”を発表し、1933年にはE.シュレーディンガーとともにノーベル物理学賞を受賞。1932年にケンブリッジ大学ルカス教授職に就任、晩年はフロリダ州立大学で過ごした
岡村浩[オカムラヒロシ]
1941年、福岡県生まれ。東京大学大学院理学系研究科物理学専攻博士課程修了。工学院大学教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
roughfractus02
6
数学から物理学に接近した著者は、ヒルベルト空間において物体の位置も変数も特定できないことを示した。本書を読むと、モノポールの発想も電場と磁場を対等と見なすだけでなく操作可能にするという数式的相関を、量子力学と相対論の関係にも適用しているように思えてくる。QEDへの不満や相対性理論への信頼、そしてモノポールや宇宙重力定数という新たな課題を示す本書が、講義録にもかかわらず美しく思えるは、方程式の変数や定数の組み合わせに留まらず、その相関を表す等号・不等号をも厳密に操作しようとする強い意志を感じるからだろうか。2022/02/12
那由田 忠
3
詳しい説明は難しすぎてよく分からないが、物理学者が一体どんな議論をしてきたのが少し見えた。2011/08/18
TSUBASA
3
ディラック方程式や巨大数仮説などで名高い物理学者ディラックの、オーストラリアおよびニュージーランドでの講義録。大学レベルの数学を必要とする部分が多いので、その辺多少なりとも知識が無いと面白みがあまりないかも。しかし、量子力学の復習になったり、モノポールに関する仮説、巨大数仮説などなど、天才が支持する物理を感じることが出来るのは魅力的。重力定数の変化について「あと2,3年で結果出るんじゃないの?」と予想するもいまだによくわかってないあたり、自然界は深遠なものです。2011/05/07
らんまる
2
本の内容が有名になりすぎているので、むしろおもしろくないw原典としての価値はあるかもしれません。2011/11/02
joyfuton
1
全体的にさらっと流して読んだ。1、2章の量子力学の最初のほうの話はよく知ってるもので、相対論的量子力学の説明くらいまで。3章以降の、モノポールの見つけ方の考察は面白かった。しかし最後の章の、重力と電磁気力の比を宇宙の年齢を結びつける話あたりから怪しくなってきた・・・(笑) 実際のところどうなんだろう?この議論はこの先どう進んだのだろう。2013/10/03