内容説明
死をめぐる旅はトスカナ州の小村モンテリッジョーニから始まる。「メメント・モリ(死を想え)」の低く静かな声がこの旅の道連れだ。季節の移ろいに生の歩みを重ね、死者たちとの語らいのなかで人間と芸術の来し方行く末に思いを馳せる。死と哀悼の風景、腐敗死体像と墓碑彫刻、死者への鎮魂、霊魂のかたち、運命の寓意表現。死のトポスを経巡り、水という元素界にいたって円環を閉じる。「生きながら死に、死にながら生きる」―図像研究から宇宙論・運命論の形而上学的世界に向けて思索を深めるとともに、死の表現を読み取り、その豊かな想像力をたどる。
目次
はじめに モンテリッジョーニの早春
第1章 死と哀悼
第2章 腐敗
第3章 死者のための祈り
第4章 霊魂のかたち
第5章 運命
おわりに 死を想う場―墓地・都市・水
著者等紹介
小池寿子[コイケヒサコ]
1956年、群馬県生まれ。お茶の水女子大学大学院博士課程満期退学。美学美術史専攻。國學院大学教授。西洋美術における死の表現に一貫して取り組む(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ゲニウスロキ皇子
3
「生きながら死に、死にながら生きる」。人生に不可避にまとわりつく死に対して、人は時に恐れ、時に幻想を抱いてきた。死を包み込む雑多な感情の群れは太古より、形を変えながらも連綿と受け継がれている。西洋の美術が歴史的に「死」をいかに捉えてきたのか。美術を鏡に西洋の死への眼差しを読み解く。2009/12/29
よの字
2
西洋において死が如何にして受け止められ、芸術化されていったのか。そこにはキリスト教的死生観だけではなく、ギリシャ・ローマ的な死生観が根強く受け継がれていることがわかる。2010/04/30
真魚
0
古代西洋、ギリシア、キリスト教など西洋宗教史においてどのような生死観が生まれ、美術に反映されていったのかを追った本。宗教哲学美術すきなひとは興奮できる。宗教解釈の移り変わりや黒死病の流行など、世の中の流れによって魂や死後世界の見方が変わったりと、あの世にも流行があるのがよくわかって面白かった。キリスト教の腐敗に対する視点とトランジ美術の関係や、運命に対する思想史などが特に好きでした。当時の人々が持ちえていた死の観念が発露されている美術品をじっくり鑑賞することは、また私たちの死を見つめることでもあるのだ。2015/05/23
i-miya
0
ボエティウス「哲学の慰め」私に大転機 生きながら死に、死にながら生きる モンテリッジョーニの早春 フィレンツェ トスカナ地方の旅 古代イタリア、エトルリア人 BC6C-7C 棺用彫刻 強大なローマ勢力に吸収 モンテリッジョーニの小町 中世都市 13C仏 アレゴリー文学「バラ物語」10人の「 第1章 死と哀悼 アキレウスとペンテシレイア BC525頃 女戦士 アマゾネス 陶器 ティレニア海沿岸 エリトリアのヴルチ 黒像式アンフォラ 髪の電力 伸びる、死後も ティマリスタとクリタの墓碑<キリスト教中世における2007/01/23
ずたみ
0
「捕えよ、そして用いよ」ジェムの絵がすごぉくかわいい。 「人生は定かならずして過ぎゆき、死んだあとは何の享楽もないのだから、命あって運に恵まれているうちに飲食し歌おうではないか。」かるぺでぃえむ〜!2021/03/10