内容説明
現象学は、人間の経験の内側に立って普遍的な学知の基盤を問う。他方、解釈学は、そうした経験が歴史的であることから視野を歴史性へと広げ、その個別性を示すが、そこには知の「相対化」の傾向が伴う。この二つの哲学が出会ったとき、何が起きたか。現象学は、「地平」の概念によって解釈学と連携しつつ、知の「絶対化」の不可能を見出すが、しかし、その後、そこからいわば垂直に自己深化していくことになる。現象学と解釈学の邂逅と離別の知的刺激に満ちた深層分析の書であり、生動する「現代哲学」の今を問うスリリングな論考。
目次
第1部 現象学と解釈学―その接近と提携(現代ドイツ哲学の動向―学的認識から経験へ;現象学の歴史的諸展開―本質現象学から「人間と世界」の現象学へ ほか)
第2部 反省理論と解釈理論(現代哲学の反省理論;解釈学の現況 ほか)
第3部 現象学の近代批判(ハイデガーによる技術批判;フッサールによる科学の客観主義批判 ほか)
第4部 媒体性の現象学への道(近さと隔たり―隠れたる媒体についての所感;現象学に課せられたもの ほか)
著者等紹介
新田義弘[ニッタヨシヒロ]
1929年石川県生まれ。東北大学卒業。現在東洋大学名誉教授。哲学専攻(現象学・解釈学・ドイツ古典哲学)(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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Yuki
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ポストモダンに興味あるなら、まずこれ!っていう本でしたね。2016/02/21
さんかくこんにゃく
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現象学と解釈学の邂逅によって、両者が共有する地平概念の限界が露わになり、新たに地平生起の根拠を探る道が見えてくる、というのがタイトルに関する主な主張だと感じた。ただこの議論に終始している訳ではなく、そこまでの前提知識やさらにその先の議論もあり、現象学6割、解釈学2割、両者の邂逅2割というのが体感的な内容割合。文章の密度はすごい。雑誌等に掲載された論稿をまとめた本なので内容被りが結構あり、やや冗長さを感じるところはあるが、異なる語り口による同内容の繰り返しは理解を深める助けにもなった。2022/03/23