内容説明
日本語の語感とは裏腹に、西洋において魔術はむしろ思想史の表舞台にあり続けた知的伝統である。錬金術や占星術と並び、またそれらと密接に絡みながら、魔術はいわば「グランド・セオリー」、「先端科学」として一級の知識人に迎えられたのだった。ただしキリスト教正統信仰との調停は複雑・微妙で、ルネサンスには百家争鳴の論題となった。はたして、その帰趨やいかに?本書は、イェイツ女史とともに英国ヴァールブルク学派を代表する著者が、最大の理論家・実践家たるフィチーノの魔術思想と、それに対する諸家の反応を克明に跡づけて、ルネサンス思想史研究に新局面を切り拓いた先駆作。改訳決定版。
目次
第1章 フィチーノと音楽
第2章 フィチーノの魔術
第3章 プレトン、ラザレッリとフィチーノ
第4章 十六世紀におけるフィチーノ魔術
第5章 十六世紀におけるフィチーノ魔術(続)
第6章 テレジオ、ドーニオ、ペルシオ、ベイコン
第7章 カンパネッラ
著者等紹介
ウォーカー,D.P.[ウォーカー,D.P.][Walker,Daniel Pickering]
1914‐85年。イギリスの思想史家。オックスフォード大学に学び、ロンドン大学、同付属ヴァールブルク(ウォーバーグ)研究所勤務。英国学士院会員。ルネサンスの魔術思想、音楽理論、異端宗教史の第一人者
田口清一[タグチセイイチ]
1956年生まれ。上智大学大学院史学専攻博士後期課程単位取得退学。法政大学講師
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感想・レビュー
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藤月はな(灯れ松明の火)
26
ルネサンス期における魔術者達の思想体系。しかし、知識が少ないので呆然とすることもしばしば。できるならば、また、挑戦してみたいです。2013/05/20
roughfractus02
5
遠隔地貿易が隆盛し都市建築や船舶建造が急増するルネサンスは、職人同士が俗語で知識を、正確な複製で設計図を共有可能な印刷技術が普及した。本書を読むと、ラテン語から俗語への転換は、ラテン語で議論する教会内の学的領域より、王侯貴族に接して俗語とラテン語を交えて行なう魔術領域にいち早く影響したかに思える。当時異教だった古代神学の「星辰」を「精気」に改変する用心深いフィチーノに始まる本書は、魔術と宗教を分けず自然魔術へと踏み出すアグリッパ、魔術をキリスト世界の変革実践と捉えたカンパネッラへの、その思想の変容を辿る。2019/04/10
大森黃馨
4
この著作の問題点は決して文章は分かり辛いものではないものの人名がなんの説明もなく出てくる事 或いは学術書とはこのようなものなのかもしれないが ふと愚考するこのような魔術的とも言える世界とは如何なるものなのかという思考と追求それこそが自分には未だにそれが何なのか分からないでいる形而上学というものなのではないか そして古代ギリシアから所詮は繋がりはないだろうが今日の胡散臭い新興宗教に至るまで追求され続けているものなのか恐らくは人の本能がそれを求め続けさせるのだろうか 2022/11/25
紫暗
1
タイトル通りルネサンス時代のいわゆる魔術といわれるものに傾倒していた人達の思想体系が書かれている一冊です。かなり専門的な単語が出てきますので、予備知識のない人は難しいかもしれません。更に、思想体系ではありますが、誰がどんな思想で誰の影響を受けてというようなことが書かれているだけで、その思想が社会に与えた影響については詳しく記述されていません。ルネサンス期に魔術を研究していた人達がどんなことを考えていたのかを詳しく知るには良い一冊です。2012/10/07