内容説明
空海が初めてわが国に請来したインド直伝の密教とはなにか?主著『秘密曼荼羅十住心論』の精髄を略述した『秘蔵宝鑰』および顕教と密教とを比較対照して、密教のすぐれていることを明らかにした『弁顕密二教論』を収録する。空海は、『秘蔵宝鑰』で、儒教・道教・バラモン教・インド諸哲学・大小乗の仏教・最澄の天台宗に至るまで、すべての思想・哲学・宗教が大きな密教の実践体系の中に包まれて、それぞれが生かされている、と説く。そして、空海の十住心体系は、われわれの心の世界の展開、精神の発達段階を明示したものであり、全体がマンダラ世界の実相そのものである。
目次
秘蔵宝鑰
弁顕密二教論
著者等紹介
宮坂宥勝[ミヤサカユウショウ]
1921年長野県に生まれる。1948年東北大学文学部印度学科卒業。同大学院修了。文学博士。名古屋大学名誉教授。1999年真言宗智山派管長・総本山智積院化主に就任
頼富本宏[ヨリトミモトヒロ]
1945年香川県に生まれる。京都大学大学院文学研究科(仏教学)博士課程修了。文学博士。密教学専攻。種智院大学学長
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感想・レビュー
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姉勤
32
弘法大師・空海の著。「秘蔵宝鑰」と「弁顕密二教論」の原文と語彙への註、意訳文を載せる。註にも註が要るほどに仏教の知識が試されるので、現代文だけを追ってもエッセンスは感じると思う。従来の経典をもって悟りを得ようとする顕教に対し、秘密の実践によってそのまま仏と成るとする密教。両著作共に密教の優位と密教の優位と顕教の不足を指摘するが、「つづきはWEBで」ならぬ、つづきは灌頂(洗礼のようなもの)の後で。か、はっきりと説かれていない。なんせ秘”密の教”えだからか。2019/03/27
記憶喪失した男
10
二律背反という単語は書いてあり、カントの「アンチノミー」を訳した日本人は空海の「秘蔵宝輪」の単語を訳語に当てている。「正法五百年、像法千年、末法一万年」とある。2018/04/12
Po
2
空海コレクションに挑戦中。秘蔵宝鑰(ひぞうほうやく)の最初、悠々たり悠々たり、甚だ悠々たり。は三筆の一人である空海の書の上手さを感じさせる。1巻目に多く取り上げられていたのは十住心論である。異生羝羊心から秘密荘厳心までの心の在り方を述べたもので、密教がいかに真のものであるかを伝えたかったかがわかる。欲に負けていてはいけない。煩悩を捨て去り、より高みを目指していこうと思わされる作品であった。2019/11/17
アメヲトコ
2
空海の代表的著作が文庫で読めるという、ちくまの素晴らしい仕事。『秘蔵宝鑰』における構築の見事さにはとにかく圧倒されます。2014/11/01
ハヤカワショボ夫
0
空海という人物に魅かれ、人を介した小説を読んできましたが、やはり生の声を聴いてみたいと思い読んでみました。古文体なのですが、解説がとても読みやすいし、空海の哲学は今も生きていて考えていたより理解できました。「弁顕密二教論」、「秘蔵宝鑰」なのですが、「なぜ密教なのか」が説かれています。しかしあとがきにあるように密教の素晴らしさ(理論)は分かるのですが、どうすればその境地に至るのか(実践)・・・がありませんでした。それはコレクション2の方なのでしょう、愉しみです。【家】★★★2015/04/11