内容説明
『マハーバーラタ』、ローマ建国伝説、ケルト神話を繋ぎ、はるかヴァーグナーの楽劇にまで延びるイデオロギーの力線。王権とは、暴力とは、法とは何か。社会と秩序の概念はどこに由来するのだろうか。デュメジルの「発見」は今日、いっそうのアクチュアリティをもって根源的な問題群に再考を迫る。新比較神話学の金字塔であるのみならず、広く人類学・人間科学の哲学的再建に向けられた知的武器とも言うべき、円熟期の神話論を集大成する待望のシリーズ。本文庫オリジナル、全篇本邦初訳、長文解題付。
目次
ミトラ=ヴァルナ(ルペルクスとフラメン;ケレリタスとグラウィタス;ロムルスとヌマ;ユピテルとフィデス;アフラとミスラ ほか)
ユピテル・マルス・クイリヌス(インド=イラン語派の三つの社会階級;ユピテル・マルス・クイリヌス;三大フラメン;ラムネス・ルケレス・ティティエス;サビニの女たちをめぐる戦争 ほか)
著者等紹介
デュメジル,ジョルジュ[デュメジル,ジョルジュ][Georges,Dum´ezil]
1898‐1986年。フランスの比較神話学者。高等師範学校卒。49年コレージュ・ド・フランス教授、79年アカデミー・フランセーズ会員。「新比較神話学」を確立し、バンヴェニスト、レヴィ=ストロース、フーコーらとともに人間科学全般の革新に寄与した
丸山静[マルヤマシズカ]
1914‐87年。批評家・元愛知大学教授
前田耕作[マエダコウサク]
1933年生まれ。和光大学教授
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感想・レビュー
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roughfractus02
7
印欧語族の古代共同体が神々、社会、思惟の3構造を成している(3区分イデオロギー)と捉える著者は、同時に神話の神々にも、例えばリグ・ヴェーダなら統治(ミトラ)と祭祀(ヴァルナ)、戦闘(インドラ)、生産(アシュヴィン双神)の3機能体系があるという仮説を立てた。本書は統治と祭祀をめぐる「ミトラ=ヴァルナ」と3機能を見渡す「ユピテル・マルス・クイリヌス」の2論文を収録する。現代に通ずる社会統治論としても読める本書だが、硬直する統治システムを法を超えて壊す役割を神話は戦闘の神、古代社会は戦士結社が担う点が興味深い。2024/03/09
ヨシツネ
0
神話の基本2018/01/05