内容説明
人類にとって宗教的現象とはいったい何か、人類史という壮大なスケールのなかでその展望を企てた本書は、20世紀を代表する宗教学者・エリアーデが最晩年に遺した畢生のライフワークである。この古今未曽有の偉大な業績は、仏教、キリスト教、ヒンドゥー教といった個々の宗教の理解を助けるばかりでなく、人類が創造した宗教そのものの姿を見事に描きだしている。文庫版第1巻は、古人類の宗教的営みから始まり、メソポタミア、古代エジプト、インダス川流域、地中海、ヒッタイト、「創世記」までを収める。
目次
第1章 時の始めに…古人類の呪術‐宗教的営み
第2章 もっとも長い革命 農耕の発見―中・新石器時代
第3章 メソポタミアの宗教
第4章 古代エジプトの宗教思想と政治的危機
第5章 巨石・神殿・祭祀センター―ヨーロッパ、地中海地域、インダス川流域
第6章 ヒッタイト人とカナン人の宗教
第7章 「イスラエルが幼き頃…」
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェルナーの日記
115
本シリーズの第1巻。世界の宗教史を論こうした作品であり、本書は宗教史の始まりをカバーしている。よって古代における宗教史の始まりは、結果的にニア・イコールとして人類文明の発達の歴史と省みることに他ならない。第1巻は狩猟時代における洞窟壁画に観るアニミズム。濃厚時代における精神的(宗教的)構造の確立と定式化が主な内容を占めている。また狩猟~農耕時代の変遷を取り上げるうえで、時代的に最も古いメソポタミア文明と古代エジプト文明を考察している。2017/01/24
優希
51
面白かったです、人類と宗教の歴史は興味深いですね。古代の宗教的営みから始まる壮大な宗教の歴史に身を任せていきたいと思います。続きも読みます。2022/12/05
roughfractus02
9
エラノス会議の牽引者ユングは憑依現象から自己を無意識と意識の間で動くものと捉え、無意識自体も個人を超えた普遍性を持つという仮説を提起した。一方、同会議のメンバーの著者は、ユングが注目した憑依とは逆の、脱魂・忘我(ekstasis)という事象から自己を捉え、世界のいたる所に宗教を生じさせた人間意識の本質構造に迫る。晩年の著作である本書は、これら死の外に立つ(ekstasis)儀礼を辿りつつ、死の外に不死を設定し、この世界を把捉する知の形成を試みた旧石器時代から旧約聖書の土師時代までの宗教的営為が網羅される。2021/06/30
Copper Kettle
5
とても興味深く読ませてもらった。まず旧石器時代から本書は始まるのだけど、そもそも人間が生きるために動物を殺して食べるという行為そのものに信仰の芽生えのようなものが含まれているとの指摘に目から鱗だった。その後、農耕社会に移行することで植物のリズム、すなわち生から死、そして再生が信仰に取り入れられたというのも説得力がある。第1巻では旧約聖書の創世記と士師記までだけど、第3章「メソポタミアの宗教」で「ギルガメシュ叙事詩」の概要を知ることができたのは良かった。2022/11/06
さんとのれ
3
人類史と絡み合うように生まれて進化する宗教。自分は信仰というものを持たない人間だけど、それでも人間にとって宗教は必然だと思わせられる。2020/07/13