内容説明
津軽の金木町に残る、太宰治の生家「斜陽館」。この赤い煉瓦塀の豪邸が、かつての津島家の栄華をいまに伝えている。金貸しから身を興し、地方政治の熾烈な権謀術数の渦中を生き抜いて、衆議院議員、貴族院議員に上りつめる父・源右衛門。跡継ぎの長兄・文治も知事や衆議院議員をつとめるが、戦後の農地改革を境に没落し、「斜陽館」すら人手にわたる。郷里で堅実に生きようとして時代のはざまで惨憺たる苦労を味わう兄たちと、家族や周囲に多大な犠牲を強いながら時代を越える名作を生みだした弟・太宰。津島家の栄光と没落の歴史を、徹底的な取材で浮き彫りにする。
目次
第1章 地主貴族(源右衛門の手紙;殿さま;ルーツ ほか)
第2章 兄と弟(若き町長;思想善導;どん底 ほか)
第3章 斜陽(農地改革;斜陽館;殿様知事 ほか)
著者等紹介
秋山耿太郎[アキヤマコウタロウ]
1945年生まれ。68年、朝日新聞社入社。79年5月から80年11月まで、青森支局勤務。現在、東京本社制作局長
福島義雄[フクシマヨシオ]
1950年生まれ。76年、朝日新聞社入社。78年12月から81年3月まで、青森支局勤務。現在、出版企画室出版開発マネージャー(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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tegi
1
太宰治の作品背景を知る意味でも面白いのだが、明治から昭和までの東北と日本の政治と社会を描く年代記として読ませる。序盤の、家系についての詳述にちょっと頭がついけいけなかったが、太宰の兄津島文治が家を継ぐ2章の手前くらいからドライヴがかかる。昭和初期、「東北出身の将校たちは『政府や財閥は東北を救う誠意がない』」という不満から軍部の暴走を下支えするが、津島家を含む地方出身の政治家・資本家はそれに呼応できなかったように思える。現代の東北はそうした課題への回答を持ちうるだろうか。2023/09/01
オランジーナ@
1
斜陽館に行きたくなった2020/07/06