内容説明
1907年、まだ封建的な風潮が強かったころ、イギリスの良家の令嬢ルーシーは、従姉妹とともにイタリアのフィレンツェを訪れた。開放的な地で、繊細で情熱的な青年ジョージと出会い、とまどいながらも心惹かれる。自分の気持ちに気づかず帰国したルーシーは、求められるままに貴族の青年と婚約するが、苦悩の中で本来の自分自身を発見する。若い女性の心の成長と真実の愛を描く永遠の名作ロマンス。
著者等紹介
フォースター,エドワード・モーガン[フォースター,エドワードモーガン][Forster,Edward Morgan]
1879‐1970。イギリスの作家
西崎憲[ニシザキケン]
1955年青森県生まれ。英米文学翻訳家。アンソロジスト
中島朋子[ナカジマトモコ]
1942年生まれ。共訳書に『巨人ポール・バニヤン』(ちくま文庫)など
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感想・レビュー
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遥かなる想い
228
フォースターが奏でる英国のロマンスだが、 なぜか 人物造形が淡白で 入り込めなかった ..身分の違い等の1907年頃の英国の 時代の風景は感じるが、 ヒロイン ルーシーの心の動きに 全くついて いけなかった..ジョージとルーシーとの恋から 婚約破棄に至る過程が正直唐突で よくわからない..映画化されたらしいが、 映像で見ると 違うのだろうか? 感情移入が難しい本だった。2017/04/08
まふ
116
みすず書房単行本で読む。著者の代表作の一つとされる。中流の上クラスの若い女性ルーシーと中流の下クラスの青年ジョージとの恋の物語。ストーリーの骨格は典型的なラブストーリーだが、英国特有の階級意識が登場人物の言動に影響を及ぼしてなかなか進まず、読者としてもイライラし通し。「斜に構えた」セシルとの婚約破棄を宣言するルーシーの想いと、ジョージの父のルーシーへのパンチの効いた実に見事な説教が事態を急展開させて大団円となる。この作品でE.M.フォースターの良さをようやく感じ取ったような気がします。G510/1000。2024/05/14
扉のこちら側
89
2016年97冊め。【121/G1000】上流階級に属する英国女性と、労働者階級の男性がフィレンツェで出会う。階級が違う彼らが出会い恋に落ちる舞台は英国ではだめだったのだ。殺人現場に出くわすという吊り橋効果もあった。菫の花の中のシーンは美しい。けれどジョージもセシルもあまり好みではない。あとがきにあるフォースターのエッセイでこの作中人物たちのその後が描かれたというエピソードが興味深い。フィレンツェの眺めを見てみたい。2016/02/14
ペグ
77
古典の面白さはその時代の社会的制約や宗教など、困難な状況の中で(人々がどの様に感じ考えて生きたのか)という〜人間としての普遍的問題が 時代を超えて現代の私達に訴えてくるところに面白さや魅力があるのではと思う。この小説ではエマーソン親子以外、イライラさせられたり憤慨したりと読者は忙しい。(眺めがいいか悪いか)は部屋の中にいる人間によっていかようにも変わるけど相変わらずイギリスの階級制度は窮屈だ。2018/03/06
えりか
61
映画がとても好きだったので。この時のヘレナ・ボナム・カーター、すごく可愛かったなぁ。柔らかくて美しい。壮大な自然があり、音楽があり、愛がある。菫の青と空の青、青一色の中で突然キスされるなんて…恥ずかしいけれど、なんて美しい場面だろうとモジモジしてしまう。自分に正直でいたり、他人に誠実でありたいとは思ってはいても、なかなか難しくって躓いたり衝突したり、素直になれない。逃げ出したくなる。でも絶対に「魂」に正直に生きるという幸福の追求を投げ出してはいけない。愛を投げ出してはいけない。2017/02/09