内容説明
『悪の華』『パリの憂鬱』の詩人はまた、傑出した美術評論家でもあった。ギリシア・ローマの美を理想として追求した新古典主義が支配的な状況において、ロマン派の巨匠ドラクロワに傾倒し、個性の美を唱えて人間精神の暗部を開放した。美術を市民の前へ、現代へと開く道を作ったのもボードレールである。本巻には「1845年のサロン」「1846年のサロン」などのいわゆるサロン批判をはじめ、八篇の批評文学を収録。
目次
1845年のサロン(抄)
ボンヌ=ヌーヴェル百貨店の古典派美術展
1848年のサロン
笑いの本質について、および一般に造型芸術における滑稽について
フランスの諷刺画家たち数人
外国の諷刺画家たち数人
1855年の万国博覧会、美術
哲学的芸術
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
しゅん
9
ボードレールにとっては批評家であることの自意識は詩人より大きかったのだと思う。20代で書いた「一八四五年のサロン」を読めば、その意気込みの深さが伝わる。自分のいまの感覚から読むとだいぶ暑苦しい言語運用だなと思ったりするわけだが、それは時代のせいだろう。色彩論をずっとアルモニーとメロディーとアンサンブルという音楽用語のメタファーで語る。このアナロジーの力が、王族・貴族からブルジョワへと鑑賞者が変わる時代の批評として相応しいと、ボードレールは感知したように思う。とにかくドラクロワが好きなことは伝わった。2025/05/31