内容説明
ヨーロッパに革命の嵐が吹き荒れていた1854年、バイエルンの国王マクシミリアン2世は、年来傾倒していたランケに「世界史の大きな流れ」についての連続講義を依頼する。おそらく君主制の危機に触発されてのことだったろう。あらゆる時代は神に直接するのであり、個々の時代はそれぞれ固有の価値を内にもっている。だからこそ、「進歩」の概念は否定されるべきであり、史料批判にもとづいた歴史叙述が求められるのである。古代ローマ帝国から説き起こし、同時代にまでいたる、ヨーロッパ全史を展望する壮大な歴史叙述。
目次
序説(出発点と主要概念)
第1章 ローマ帝国の基礎―キリスト紀元初めの四世紀間の概観
第2章 ゲルマン人の侵入とアラビア人の侵略によるローマ帝国の変化
第3章 カロリング時代
第4章 十一世紀から十三世紀にいたる教権時代
第5章 第五期―十四、五世紀
第6章 宗教改革と宗教戦争の時代―十五世紀末から十七世紀中葉まで
第7章 列強の成立と発展の時代(十七、八世紀)
第8章 革命の時代
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
うえ
5
「ルターは、初めから一つの教会を樹立しようなどとは思ってもいなかった。このような誣言にはいつも抗弁していた。彼はまたこうもいっている、自分はすべての信者を集めて一つの教会をつくりたいが、一人のキリスト者も見出だせない、と」「彼とメランヒトンとは一緒になって一つの新しい教義を作り上げたが、それはかなりカトリシズムに近いものであった」カルヴィニズムは「ルター派よりもいっそう伝統を離れるもので、むしろ共和主義の原理をとり入れ、キリスト紀元初めの数世紀におけるようなキリスト教をうちたてようとする意図をもっていた」2015/08/15
筑紫の國造
4
近代歴史学を確立させた学者のひとり、ランケによる通史。「世界史」とは言ってもローマ史から始まるヨーロッパ史だが、時代的にそれはまあ仕方のないことだろう。本書の優れているのは、古代ローマからランケの時代までの歴史の流れが、非常にスムーズに叙述されていることだ。現代の研究水準から見て間違いもあると思うが、それでもこのレベルの歴史叙述を一冊で過不足なく収めた力量には感嘆の他ない。「進歩の歴史」という考え方を排撃するランケの思想は、現代でもなお有効かつ必要なものだと思われる。2021/05/20
(ま)
1
近代歴史学の父の西洋の輪郭2019/07/27
夢仙人
1
海外の歴史家の本を読むのは大変刺激的である。2015/06/07