内容説明
イングランド北部の炭鉱町ウィガン。1936年、オーウェルがこの労働者の町を訪れたとき、不景気と失業がひろがっていた。炭鉱夫たちと生活をともにしながらオーウェルは、彼らの顔貌を独特な身体感覚のもと丹念に書きとめていく。ここは、中産階級下層の彼の階級意識が決定的に試される場所となった。たとえば、「労働者階級には悪臭がする」。社会主義への支持を表明しながら、越えられない階級間の「ガラスの間仕切り」。彼はこの違和感を、あえて率直に表明する。声高に語られるドグマではなく、人間らしい生活、すでに中産階級からは失われてしまった生活様式への愛が、未来を考えるひとつの指標として提示される。20世紀ルポルタージュの嚆矢。
目次
ブルッカー夫妻の下宿屋
炭鉱の奥深く
炭鉱夫の生活実態
住宅状況
失業の本質
失業者の生活実態
工業地帯―北部対南部
階級の対立
階級意識の実態
階級意識―本質と矛盾
社会主義の問題点
私の提案
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
lico
4
Ⅰ部とⅡ部で内容がかなり異なるため、まとまりがないように感じた。ルポルタージュ的な内容はⅠ部だけであり、その部分を期待して読むと肩透かしを感じることになりそう。『パリ・ロンドン放浪記』のような臨場感も薄く、個人的にはあまり良い作品とは感じませんでした。Ⅱ部はオーウェルの思想がかなり前面に出ているためオーウェルの作品が好きなら楽しく読めると思う(そもそもオーウェルの名前を知らない人が手に取るような作品とも思えないですが)。2016/12/05
Teppei Sakano
0
出自や教育の有無、職業によってハッキリと区別される階級とその格差。お互いを相容れないものと認識し振る舞うこと。虐げられる労働者にとって不当な貧困状態は無論なくなるべきだが、対立構造にあるブルジョアの存在は己の置かれた状況を認知させ、不満や怒りの矛先や変革の必要性も気づかせることにもなるだろう。2023/04/10
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