内容説明
いよいよ本書の第三部において、ある恐るべき深淵的な思想としての永遠回帰の思想がツァラトゥストラによって告知される。神の死という現代のニヒリズムのもとでの生の真の意味とはなにか。ニーチェは現代の人間の危機的状況をニヒリズムそのものへの徹底と、生の瞬間の肯定により主体的に超克することを説く。ニーチェの人間学の精髄が隠された、万人のための運命的な書というべき真の哲学書。下巻には全四部構成のうち、第三部から第四部までを収録。なお、文庫収録にあたっては、最近のニーチェ研究の成果に基づいて訳註を大幅に増補改訂した。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ころこ
40
第4部の扉に引用されている「人間たちに同情したために、神は死んだ」は単純な人間主義の時代の終焉を直観によって予告している…というが、実際には第4部はデュオニソス賛歌と呼ばれる詩歌によって結構な割合が占められている。『オイディプス』のスフィンクスは子供→青年→老年の謎かけをおこなった。ツァラトストラはこの謎を逆方向に考えた。ラクダ→獅子→子供とはそういう意味にも解せる。否認とはフロイトの防衛機制から来た言葉で、否定することがかえってそのことを強調し肯定することになってしまうことを言う。尚、カントには否定の肯2025/04/27
∃.狂茶党
19
基本的に上巻と変わらず、訳註が詳細すぎて、普通に読むことに差し障りがある。 弱者である私にとって、ニーチェの考えは敵である。 ところでこれは哲学だろうか、どうも構築であるとか、検証だとかに問題があるようなので、哲学の言葉としてはあまりに詩的であるので、思想って言葉のほうがあってるように思う。 哲学と思想の違いはそういう点ではないのかもしれないが、ニーチェ個人に密接に絡みついて、一つの学問というのは難しいような気がする。2023/10/25
ミサ
6
ニーチェ『ツァラトゥストラ 下』私は、勇気が語る「これが生であったのか?さあ!もう一度!」っていうところが、とっても好き。泣きそうになるぐらい好き。高校生の頃から好き。ニーチェの著作の中で一番好きな部分かもしれない。面白かった!またじっくり読もう。2018/12/31
roughfractus02
4
認識から解釈への転換は容易ではない。この思考する自己自身こそ突き離す必要があるからだ。第1部から見え隠れする道化師のからかいの声が形を変えて語りかけてくる中で、蛇を口に呑みこんだ牧人や重力の精の幻影の中に「謎」と「深淵」を見出すツァラトゥストラは、自らの認識に根を下ろす一度かぎりの生に対し、永遠回帰の重さを課して言葉にしようと試みる。一方、山上で人々を招く彼は、この思想の重さに耐える自身を一切の価値転換の中に放り込むかのように饗宴を催し、その道化的力によって自らを突き離していく。この困難な生よ、何度でも。2017/08/10
POYOCHIN
3
超人伝説終章。詩的で読めば何か人生に大事なことを悟ったような気分にさせてくれる毒を持つ。内容はと言えばツァラトゥストラは結局自分の言葉で自分の首を絞めている。力への意志はルサンチマンでないと言い切れるのだろうか。ああ哀しいかな人の営為は全て醜いルサンチマンによるものとニーチェは証明してしまった。それゆえの超人なのだろうが、超人未だ現世に現れず。ツァラトゥストラの願いは言葉にした瞬間露と消えた・・・・といった感じ。偉大な発想を綴った書なのだろうけど解説本を素直に読んだ方が理解は進むと思う。2008/09/12