出版社内容情報
採用、出世、お金、働き方、人間関係、進まないDX化……
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時は1993年。若き政治学者・木村幹(27歳)は、愛媛大学法文学部に助手として採用された。「雇用の安定した国立大学に就職し、研究に集中したい」という夢が早々に叶い、これで韓国の政治文化研究に打ち込めると思いきや、国立大学の置かれた状況は刻一刻と悪化していく。
神戸大学に移るも、2004年の独立行政法人化により研究費も人員も削減され、予算獲得のための仕事が日々の研究を圧迫する。昇進しても、小さいパイの取り合いで疲弊するばかりだ。
還暦間近のとある部局長が見つめた、おかしくも哀しい国立大学の30年。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
よっち
27
1993年。愛媛大学法文学部に助手として採用され、研究科長にもなった還暦間近のとある教授が語るおかしくも哀しい国立大学の30年。じっくり研究に取り組めない大学教員の慌ただしい日常や、改革から独立法人化が進んだ国立大学の激変、大学教授はどのように採用されるのか、組織としての大学のガバナンス、大学教員と人間関係、学会でのお仕事、営業する大学教員、海外に活路を見出す大学など、教授にまで昇進した経緯は自身も語られているように、今よりもおおらかな時代だった影響もありそうですけど、今の国立大学はなかなか大変そうです。2025/05/05
さとうしん
18
韓国政治研究で知られる著者が大学教授の業務を紹介。一般に大学教授の仕事としてイメージされている教育・研究以外にも、学内行政、学会関連の業務、教職員あるいは研究者としての営業活動、研究者の卵としての院生やポスドクの指導、外部資金の獲得、留学生の招致等々多様な仕事ぶりが見えてくる。著者も断っているように大学教授といっても国公立か私立か、あるいは大学の規模、大学での役職によってその業務は様々だが、それをふまえた目配りもできていると思う。2025/04/14
月をみるもの
16
オリックス研究家、、、、もとい韓国政治史研究の第一人者として著名な木村教授が、赤裸々に語る大学の現状。文学部タダノ教授シリーズや、身近な大学の先生たちとのおつきあいを通じ、ある程度わかってるつもりだったがあらためて本書を読むと「ここまで来ちゃっうと、もはや元には戻れないのでは」というのが率直な感想。明治日本が「生き馬の目を抜く国際社会で生き延びていくには、国民の教育こそが肝要だ」との認識をもち、現在に続く様々な制度をたちあげてから150年。初等・高等教育ともに制度自体が、限界を迎えつつある。2025/05/11
あっくん
13
純粋に大学教授がどのように日々業務をこなしているのか興味を持ち読んでみた。 国立大学の独立行政法人化によって大学の運営が様変わりしたこと、研究費に困窮していること、大学教員のポストが狭まっていることなどを読み取った。 若かりし頃、研究者を目指したがあまりの閉鎖性に辟易してドロップアウトした身としては、己の選択は吉だったのかも、と思う。研究だけで生きていける世界に憧れたが、現実には研究以外の業務に忙殺されている。これはどんな仕事にも当てはまる。専門性で生きるためにはそれを支える多量の雑務も必要だ。 2025/04/28
てくてく
7
専門の韓国政治の他、球団(オリックス)愛やマウンテンバイクの趣味などで有名な神戸大教授が大学教授の多様な業務や独立行政法人後じわじわと首を絞められているような現場の状況を語った一冊。研究に集中することができた時代を経験しているし、その分野の第一人者で研究者としてはトップ層に分類される人だからか、それで踏ん張れる体力に圧倒された。女性研究者・教員の言及部分は、女性は今なお大学業界ではマイノリティで見えない存在なのかなと思ったりした。2025/04/22