出版社内容情報
アプリで仕事を請け負う配達員など、労働法に保護されない個人事業主には多くの危険が潜む。労働法は誰のための法か。多様な働き方を包摂する雇用社会を考える。
内容説明
アプリで仕事を請け負い、ウーバーやアマゾンの配達員として働くギグワーカーたち。時間にとらわれず、働きたいときに働くのは、自由に見える。しかし労働法によって保護されない個人事業主には、労災保険が適用されないばかりか、最低賃金や長時間労働の規制も、失業時の補償もない。その勤務実態はときに苛酷で、危険も伴う。労働法は誰のための法なのか。欧米各国の動向も視野に、フリーランスの「労働者性」を問いなおし、多様な働き方を包摂するこれからの雇用社会を考える。
目次
第1章 新しい働き方のどこが問題か―フリーランス・ギグワーカーの実態
第2章 労働法とは何か―成り立ちと考え方
第3章 労働者性と使用者性―「労働者」「使用者」とは誰か
第4章 どのような法制度が必要か―EUやドイツの動向から
第5章 「労働者性」を拡大する
第6章 これからの雇用社会
著者等紹介
橋本陽子[ハシモトヨウコ]
東京大学法学部卒業、同大学院法学政治学研究科修士課程修了。現在、学習院大学法学部教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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おたま
39
ウーバーイーツの配達員は、実はウーバーの正規労働者ではない。ウーバーの請負を受けたフリーランス、つまり形式的には個人事業者だ。その彼らをはたして現在の労働法で守ることはできるのか?現在、労災認定の決定が出されて、労働者と認められつつある。つまり労基法上の労働者と認められつつある。こうした新しい働き方を巡って書かれたのが本書。これは緊急に解決が求められていることであり、その点では大変タイムリーな本だ。がしかし、著者の専門がドイツの労働法であるためか、EUやドイツでの取り組みについての記述が多い。2024/03/29
よっち
30
アプリで仕事を請け負い配達員として働くギグワーカーたち。欧米各国の動向も踏まえながら個人事業主の「労働者性」を問いなおし、これからの雇用社会を考える一冊。働きたい時に働くのは一見自由に見えるが、労働法によって保護されない個人事業主には、労災保険が適用されないばかりか、最低賃金や長時間労働の規制も失業時の補償もない。個人事業主に労働法は何ができるのか、その歴史的経緯や欧州の状況も比較しながら考える内容になっていて、年内に施行されるフリーランス新法の存在が少しでもその改善に繋がることを願わずにはいられません。2024/04/02
Francis
12
今月に入って施行されたフリーランス新法について第6章「これからの雇用社会」にて記述。本書は全体的に労働法の歴史を振り返り「労働者」とは歴史的にどのように考えられてきたかを中心に論述。日本は労働組合法上の「労働者」はプロ野球選手など労働基準法上の労働者よりも広い概念として認められてきたが、どうして労働組合法と労働基準法とで差があるのか、良く分からなかった。ウーバーイーツ、あるいはギグワークなど「新しい働き方」がもてはやされているが、言葉に踊らされず、労働者の権利が認められるか否かで判断すべきだろう。2024/11/15
ねお
11
フリーランス新法が24年11月から施行されるのを前に、労働法と下請法とフリーランス新法との関係やフリーランス新法制定の背景をおさらい。2024/10/06
awe
8
労働法学者の一冊。相当な情報量がこの薄い一冊に詰め込まれており、学者の書く新書はこうなるという典型。書いてある内容を十分に理解しようと思えば、関連する文献や論文にあたらないと駄目なんだろう。◆フリーランス新法は今月施行となったが、現行の労働法ではフリーランスに対する保護が十分とは言えない。彼らに労働者性をどのように認めるか(それにより保護を与えるか)という点が論点となる。しかしここで思うのが、山下慎一が『社会保障のどこが問題か』で言っていたように本来的にフリーランスという形で働く人々を(事故等からいかに)2024/11/17