出版社内容情報
なぜ、ここに新しい基地が――? 20年にわたるフィールドワークをもとに、社会学者が、辺野古の歴史と現在を描き出す。親愛のこもった、沖縄入門。
内容説明
普天間基地移設問題の最前線としての名護市辺野古―。しかし、そこには地域の歴史があり暮らしがある。キャンプ・シュワブとどのような関係にあるのか、普天間基地移設の候補地としてなぜ辺野古が浮上したのか、「条件つき受け入れ容認」とはいったい何を意味するのか。二〇年にわたり現地でフィールドワークを続ける社会学者が、親愛の情を込めて描く、辺野古を知ってもらうための初めの一冊。
目次
第1章 辺野古の歴史(シュワブ以前の辺野古;米民政府からの要請 ほか)
第2章 辺野古のいま(辺野古社交街の現在;軍用地料の存在 ほか)
第3章 普天間基地移設問題の経緯(1)一九九五‐二〇一〇(一九九六年四月―普天間基地移設問題の発端;一九九七年一月―「命を守る会」発足 ほか)
第4章 普天間基地移設問題の経緯(2)二〇一一‐二〇二一(二〇一一年六月―新生・命を守る会発足;二〇一一年一二月―環境影響評価書の提出 ほか)
第5章 二〇二二年名護市長選挙(一月一九日(水)くもり
一月二〇日(木)雲が多めの晴れ ほか)
著者等紹介
熊本博之[クマモトヒロユキ]
1975年、宮崎県生まれ。明星大学人文学部人間社会学科教授。専門は社会学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ノンケ女医長
26
地図で確認すると、沖縄県の「辺野古」は本島の辺境と言っても良さそうな場所。観光地はおそらく少ないと思うし、北上するにしても迂回すらしなさそう。どうしてここに、新基地が建設されるのか。住民の方々は、戦前から何を大切にして暮らしてきたのか。在沖米軍基地に、本当は何を思っているのか。歴史と、辺野古住民の思いを第一にまとめられた、確かに入門書である。ニュースで聞くたびに「どういうところなんだろう」と気になっていた地名。次に沖縄へ行くときは、是非立ち寄ってみたいと思うことができた。良作である。2023/11/24
wasabi
19
沖縄についてあまりにも浅い知識しか持ち合わせておらず手にした本。観光で3度、仕事で1度訪ね、いくらか文化や歴史を学んだが、やはり通り一遍の知識だ。沖縄返還50周年の節目の年を迎え、偶然にもこの春に那覇市から移住してきた仲間ができた。かの地をもう少し深く学ぶいい機会に思う。ここでは我々が傍観する普天間基地の辺野古移設問題をめぐり、地元島民の極めて複雑に揺れる胸中の一端を知る。まとめにあるように、反対の意思表示は無視され、賛成という選択肢しか認められない辛さ。それによる責任の転嫁。どう寄り添うべきか考えたい。2022/12/06
二人娘の父
11
『交差する辺野古』でフィールドワークを通じて辺野古住民の「他者の合理性」(岸政彦氏)を浮き彫りにした著者。これは新書としてこのタイミングで出版した編集者を大いに評価したい。前著のダイジャスト版としても読めるし、純粋なルポ(特に直近の市長選)としても読み応えは十分だ。実は私も今年の名護市長選の現場に居た。立場や考えが著者と同じとは言い切れないが、伝えたい思いは痛いほど分かる。私が感じた読後の「悲しみ」は辺野古住民と名護市民へ届くのだろうか。そのことを改めて考えている。2022/04/11
駒場
8
長年辺野古でフィールドワークをしてきた著者による入門書。「なんで辺野古なの?」「何が論点なの?」という疑問に対して平易な解説をしてくれつつ、そもそも97年の名護市住民投票の選択肢を作る段階で保守派に妥協したことから「基地問題と経済振興」が二者択一の問題かのようにすり替えられてしまったこと、「基地には反対だが結局民意が反映されないという諦念から、ならば政府と交渉できる人を代表に選ぶ」という、住民が“決定権なき決定者“にされてしまうという構造が戦後の強制接収の時代から続いていることを鋭く暴く。とても良い入門書2022/07/11
Tom
6
ひろゆきが茶化していたことに憤りをおぼえたが「そういう自分は辺野古の何を知っているんだ?!」と内なる声が聞こえて読むに至った。辺野古を含む沖縄の米軍基地問題について、本土に住む自分は「加害者」でしかないので何も言えないと思っている。でも、知ることは大事だと思う。最後に「決定権なき決定者」という概念が説明されるが、辺野古の人々は戦後からずっとその立場に置かれていたのだ。もうなんか、すまないという気持でいっぱいになった。自分たちの都合のいい選挙結果は認めて、都合の悪い選挙結果は無視する安倍と菅には反吐がでる。2022/10/24