出版社内容情報
源氏物語に始まり、道元、世阿弥、頼山陽、鈴木大拙、三島由紀夫に至る様々な言葉と交錯し、その魂と交響する。古都をめぐり古今の思考の足跡を辿る京都思想案内。
内容説明
千二百年にわたる人々の記憶が集積した古都をそぞろ歩く。するとたちまち、源氏物語や古今和歌集に始まり、道元、世阿弥、頼山陽、鈴木大拙、三島由紀夫に至るまでのさまざまな言葉と交錯し、その“たましひ”と交響することになる。逍遥によってこそ、諸行無常の悲哀を追体験でき、権力者がつくりあげたものではない本当の歴史が理解できるのだ。東アジアの思想のみならず、古今東西の思想・文学を広く渉猟してきた著者ならではの、京都の「奥深きところ」をめぐる思想案内。
目次
序章 京都とは―逍遥の準備
第1章 出町柳から北白川まで
第2章 北白川から御苑まで
第3章 御苑から丸太町通まで
第4章 丸太町通から四条まで
第5章 四条から八条まで
第6章 八条から深草まで
著者等紹介
小倉紀蔵[オグラキゾウ]
1959年東京生まれ。京都大学大学院人間・環境学研究科教授。東京大学文学部ドイツ文学科卒業、韓国ソウル大学校哲学科大学院東洋哲学専攻博士課程単位取得退学。専門は東アジア哲学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
HANA
63
京都に関する随筆。というよりは京都を通り過ぎて行った思想家たちに関する随想といった趣の一冊。そのためか本書が逍遥しているのは吉田山、京大周辺から鴨川沿いに深草までの道行。今までよくわからなかった「絶対矛盾的自己同一」って説一切有部の刹那滅だな、とか教えられる事多し。ただ京都に関する随筆とは鏡みたいな一面も持ち合わせていて、本書が映し出すのは「悲哀」。ただ個人的には眉を顰めて悲哀を強調するより、京都出身の漫画家が実家の町屋にアルミサッシが入って嬉しかった、というエピソードに生の京都らしさを感じてしまう。2019/03/10
trazom
32
私は旅行が好きじゃない。ガイドブックの写真と同じ風景をカメラに収めるだけの旅に行くくらいなら、家で本を読んでいた方がよほど楽しい。でも、この本のように、街を彷徨いながら、土地と歴史に刻み込まれた「思想」に思いを馳せる旅なら、心から幸せになれるように思う。古今和歌集はちょっと苦手だが、西田幾多郎、鈴木大拙、柳宗悦、伊東静雄、梶井基次郎、中原中也、頼山陽などに思いを馳せながら京都を「逍遥」できる、とても豊かな一冊だ。学生時代に過ごした京都を、もう一度こんな風にゆっくりと歩いてみたいと、心から思った。いい本だ。2019/03/28
キョートマン
13
歴史とか哲学とかで京都を深く語っているが、全体的に著者の酔いしれを感じる。あと京都の本のはずなのに韓国の話が多すぎる。2021/04/24
そうたそ
11
★★☆☆☆ 大学の講義がもととなって執筆された書とのこと。京都を巡りながら、様々なことに思想をめぐらせる、これといって決まりなく自由に書かれた内容に思える。同内容の著者の講義で、共に京都を巡りながら、話を聞いていたら面白いのかもしれないが、こうして文章という形で読むと、新書に期待するような内容ではなかった。2022/11/11
アメヲトコ
10
京都のまちを歩きながら、この都市が生んだ文学と思想に重いを馳せ、偶発的に立ち現れる〈第三のいのち〉を見出していく一冊。まちを歩くというのはこういうことなのでしょう。尹東柱をその政治的な縛りから解放しようとする主張や、「そうだ、京都行こう」を東京資本による浅薄な京都蔑視だと喝破するくだりなどには大いに同感。2019/07/14