出版社内容情報
日本語には、現在の学校文法に代わる新たな文法体系が必要だ。豊富な古文の実例をもとに日本語の隠れた構造に迫る、全く新しい理論。
藤井 貞和[フジイ サダカズ]
内容説明
日本語文法を理解するには、日本語の起源から問いなおさねばならない。日本語の発展史に即した文法理論が必要であり、西洋語の文法を日本語に当てはめた現在の学校文法に代えて、新たな文法体系を打ち立てねばならないのだ。現在を示す「あり」(r)、過去の「き」(k)、推量の「む」(m)、形容の「あし」(s)の組み合わせで成り立つ時の助動辞をはじめ、日本語の隠れた構造を明らかにし、豊富な古文の実例をもとに、日本語文法の本質に迫る。古文の読みが愉しくなる、全く新しい理論体系。
目次
序章 krsm‐四辺形とkrsm‐立体
第1章 アリの助動辞‐圏
第2章 過去、伝来、完了、存続、継続
第3章 伝聞、形容、様態、願望、否定
第4章 推量、意志、仮定
第5章 自然勢、可能態、受身、敬意、使役
第6章 助辞の機能の広がり
第7章 品詞と構文
第8章 敬語、人称体系、自然称
終章 論理上の文法と深層の文法
著者等紹介
藤井貞和[フジイサダカズ]
1942年生まれ。東京学芸大学、東京大学、立正大学の各教授を歴任。詩人・日本文学者(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
1 ~ 1件/全1件
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
佐島楓
36
レポート参考文献。古語中心で、わたしの求めている情報とずれがあったのが残念だった。2016/11/15
34
10
藤井貞和には中高生向けの類書があるが、本書はよりコンパクトにして高密度。古典文法の世界が立体的に、つまり眼に見えるかたちでまとめられている。従って「体系」というタイトルに偽りはないのだが、本書の魅力はむしろ個々の事項説明にあるかもしれない。とくに助動詞の説明には、目から鱗というのがいくつかあった。『源氏物語』などを原文で読むには、註釈つきのものであっても、学校文法だけではものたりない。本書はその架け橋になるか、あるいは少なくともあの近づきがたさがなにに由来するかを明瞭にしてくれるだろう。2016/12/16
bapaksejahtera
6
我々が習ったのは学校文法であるが国語学者には批判が強い。外国人日本語学習にも不適当である。本書では最初にkrsmとして助動辞を説明するので注目した。ローマ字は動詞活用の説明にこそ有用だが、読み進めると本書の対象とするのは専ら古語であり、拍子抜けの感を受けた。折角のローマ字使用は専ら助辞助動辞の由来説に使われ、文法という本来分析的叙述的であるものから離れていく。推論としては目を引く記述も多い。後段、品詞と構文に進みやや文法に近づいたが、本書は文法書というより、日本語の深みを古語の世界から知るための本だろう。2021/04/13
あ
3
駄作だと思う。通説と異なる自説を述べる際の前置きや説明が明らかに不足しているし、説得力に欠ける。あと著者の日本語が下手すぎてヤバい。こういう文体ってある種の衒学趣味から派生してくるんだろうな。わざとやっているとしか思えない。こだわりの図解も蛇足。とはいえ、助動辞と助辞のもつ意味の広がりを最小限の機能に還元し、助動辞間の派生関係や機能の繋がりを音韻を手掛かりにして推測していく過程は見ていておもしろい。が、鵜呑みにはできない。2022/12/18
の箱
2
英語の時制・助動詞が面白いことに最近気づいて、日本語(古文)も勉強し直そうと思い手に取った。A詞(名詞の類)B詞(動態詞)でなく、「機能」しか果たしていないC辞(助動辞/助辞)に焦点を絞る。C辞に当たるものは長い歴史の中で獲得されていったのだとされる。よって、固定化したC辞に関する知識をテクストに流し込むのでなく、そのテクストごとにC辞が現れるかどうか、またどう成長しているのかを見るべきとする。であるから、本書はC辞を固定的なものでなく揺れているものとして、既存学説と、テクストごとの筆者の解釈が提示される2019/05/10